誰にも、気づかれたくない。

それは、隠したいということではない。
ただ、説明のいらない顔でいたい。

変わりたい。
でも、変わったと思われたくない。

綺麗になりたい。
でも、「何かした?」と問われたくない。

この矛盾を、
言葉にできないまま抱えてきた。

「少しだけ」と言う。
その言葉の中に、欲がある。
同時に、恐れもある。

「変わったね」
その一言で、輪郭が露わになる気がして。
自分が自分を演出した事実を、
誰かに確定されるのが怖い。

気づかなかった。
欲しかったのは、美しさではなく、
「もともとこうだった」という自然さだったのだと。

大きく変われば、気づかれる。
変わらなければ、満たされない。

その間に、答えがあるとしたら。

もし手に入るとしたら、
それは「変える」ではなく「溶ける」ということだろうか。

執筆者:SERENITAS by 表参道歯科アールズクリニック 院長 田中良一
東京医科歯科大学(東京科学大学)卒業
元 山王病院 歯科医長(審美歯科・歯周補綴担当)