症例写真を見る。
白く、整っている。

「綺麗」だと思う。
でも、何かが足りない。
それが何か、ずっとわからなかった。

写真は、光を記録する。
でも、光の通り方は記録できない。

写真は、色を記録する。
でも、奥行きは記録できない。

写真は、形を記録する。
でも、動いたときの自然さは記録できない。

本当に美しい歯は、
写真だけでは伝わらない。

話しているとき。
笑ったとき。
ふとした瞬間。

そのときに感じる「違和感のなさ」は、
一枚の画像には収まらない。

だから、症例写真で選ぶことには限界がある。
写真映えする歯と、日常に溶け込む歯は、同じではない。

私が欲しかったのは、
写真に撮りたくなる歯ではなかった。

写真に撮る必要がない歯だった。

いつもそこにあって、気にならない。
それが、私にとっての完成なのだと思う。

執筆者:SERENITAS by 表参道歯科アールズクリニック 院長 田中良一
東京医科歯科大学(東京科学大学)卒業
元 山王病院 歯科医長(審美歯科・歯周補綴担当)