「白くしてください」
審美歯科を訪れる方の多くが、そうおっしゃいます。
その気持ちは、よく分かります。
黄ばんだ歯が気になる。もっと明るい印象にしたい。
その願いは、自然なものです。
ただ、白さの先に、もう一つの世界があることを知っていただきたいのです。
白さの先にあるもの
審美歯科の世界では、長らく「白さ」が価値の基準でした。
より白く、より明るく。
それは、分かりやすい目標です。
しかし、白さを追求した先で、ふと立ち止まる方がいます。
「きれいになったはずなのに、何か違う」
「自然に見えない気がする」
その違和感の正体を、お伝えしたいと思います。
光の深度という概念
天然の歯には、独特の「深み」があります。
表面だけでなく、内側まで光が入り込む。
その光が、内部で微妙に拡散し、反射する。
だから、天然の歯は「質感」を持っています。
白さは、表面の話です。
歯の質感は、内側の話です。
この違いが、品位を決定づけます。
なぜ、歯の質感が失われるのか
多くのセラミック治療は、光の深さを失わせます。
なぜか。
「白さ」を追求するあまり、光を遮断してしまうからです。
白い材料は、光を反射します。
反射するということは、内側まで光が届かないということです。
だから、白い歯は「のっぺり」として見えます。
深みがなく、人工的に見えます。
これが、「治した感」の正体です。
匿名の美学
本当に美しい治療とは、気づかれない治療です。
「きれいですね」と言われることが、目標ではありません。
「変わらないですね」と言われること。
あるいは、何も言われないこと。
それが、私たちの考える最高の結果です。
誰にも気づかれない。
けれど、確実に美しくなっている。
これを「Anonymous Aesthetics」と呼んでいます。
光の深さを守るために
歯の質感を守るには、二つのことが必要です。
一つ目は、天然歯をできるだけ残すこと。
天然のエナメル質ほど、美しく光を通す素材はありません。
だから、削る量を最小限に設計します。
二つ目は、最高峰のセラミックを使うこと。
私たちが使用するのは、演色性の高い材料です。
白さではなく、光の通り方を設計します。
この二つが揃ったとき、天然歯と見分けがつかない治療が実現します。
白さの、その先へ
「白い歯」を求める気持ちは、大切なものです。
それは、より良い自分でありたいという願いの表れです。
ただ、その願いの本質は何でしょうか。
おそらく、それは「自信を持って笑えること」ではないでしょうか。
「歯を気にせず、会話を楽しめること」ではないでしょうか。
そのためには、白さと同じくらい大切なものがあります。
それは、自然であること。
誰にも気づかれないこと。
白さを否定するのではありません。
白さの先に、光の深さという世界があります。
私たちは、そのことをお伝えしたいのです。
