執筆者:表参道歯科アールズクリニック 院長 田中良一
東京医科歯科大学(現:東京科学大学)歯学部卒業
元 山王病院 歯科医長(審美歯科・歯周補綴担当)
笑顔に自信、持てていますか?
鏡を見るたび、ふと気になる前歯のこと。会話を交わすとき、写真に写るとき、自然と意識が向いてしまう口元のこと。前歯は、お顔の印象を決める大切な要素であり、私たちの表情や印象に深く関わっています。
前歯に何らかのお悩みを抱えていらっしゃる方は、決して少なくありません。むしろ、多くの方が何かしらの気がかりを持ちながらも、なかなか人には話せずにいらっしゃるのではないでしょうか。
よくお聞きするお悩みとしては、次のようなものがあります。
- 歯の色味への気がかり:茶色がかった色合いや、黄ばみが気になっている
- 形や大きさへの不満:小さすぎる、あるいはバランスが整っていないように感じる
- すきっ歯や隙間:前歯の間に空いた隙間が気になる
- 欠けや削れ:何かの拍子に欠けてしまった部分がある
- むし歯による変色:むし歯の治療跡が黒ずんでいる
こうしたお悩みは、単なる見た目の問題にとどまらず、日々の暮らしにさまざまな影響を及ぼすことがあります。
たとえば、人とお話をするときに、つい口元を手で隠してしまう。写真を撮るとき、自然な笑顔を作ることをためらってしまう。大切な場面で、心から笑うことができない。こうした小さな瞬間の積み重ねが、知らず知らずのうちに、ご自身への自信や生活の質に影響を与えているかもしれません。
治療をお考えになりながらも、「費用が心配」「健康な歯を削るのは不安」といった理由から、なかなか一歩を踏み出せずにいらっしゃる方も多いことでしょう。そうしたお気持ちは、とてもよく理解できます。
前歯をきれいにする方法
セラミック治療
前歯の審美歯科治療といえば、長年にわたって広く選ばれてきたのがセラミック治療です。陶材という素材の持つ美しさを活かした治療法で、多くの患者様に満足いただいてきた実績のある方法です。
セラミック治療の美しさと特性
セラミック治療の最大の魅力は、その卓越した審美性にあります。陶材という素材そのものが持つ透明感と光沢により、天然の歯に非常に近い、自然で美しい仕上がりを実現できます。
光の透過性においては、セラミックは天然歯にもっとも近い特性を持っており、お口の中で非常に調和のとれた見た目を生み出します。また、色の安定性にも優れており、長期間にわたって変色しにくいという特徴があります。
一方で、セラミック治療を選択する際には、いくつかの点についてよくご理解いただく必要があります。
歯を削る必要がある
セラミック治療では、クラウン(被せ物)やラミネートベニアを装着するために、セラミックの厚みを確保する必要があります。そのため、健康な歯質を一定量削合する必要が生じます。
削合する量は、治療方法や歯の状態によって異なりますが、完全に避けることはできません。場合によっては、歯の神経に近い深さまで削合する必要があり、神経を保護する処置や、やむを得ず神経を除去する処置が必要になることもございます。
一度削合した歯質は、残念ながら再生することはありません。そのため、将来的な歯の健康を考えると、できる限り健康な歯質を温存することが望ましいとされています。
費用
セラミック治療は保険適用外の自由診療となるため、費用面での負担が大きくなります。一般的に、一本あたり十万円から二十万円程度の費用がかかることが多く、複数本を治療する場合には、かなりの金額になります。
この費用面での負担が、治療を躊躇される大きな理由となっている方も少なくないでしょう。
治療にかかる回数
セラミック治療は、歯科医師が歯を形成し、型を採得した後、専門の歯科技工所でセラミック補綴物を製作し、後日装着するという工程を経ます。そのため、通常は二回から三回程度のご通院が必要で、治療完了までに二週間から一ヶ月程度の期間を要します。
お忙しい日々をお過ごしの方や、結婚式などの大切なイベントが間近に控えている方にとって、この期間は長く感じられるかもしれません。
新しい選択肢、「ダイレクトベニア」
最近、歯科の材料がとても進歩して、コンポジットレジンという歯科用のプラス近年、歯科材料の進歩は目覚ましく、コンポジットレジンと呼ばれる歯科用プラスチック材料の品質が飛躍的に向上しました。それに伴い、歯科医師がお口の中で直接材料を用いて治療を行う「直接法」による審美治療が広がりを見せています。
その代表的な治療法が「ダイレクトベニア」です。
ダイレクトベニアとは
ダイレクトベニアは、審美歯科治療用に開発された高品質なコンポジットレジンを、歯科医師が患者様の歯に直接盛り付け、特殊な光を照射して硬化させながら、理想的な形態と色調をその場で作り上げていく治療法です。
セラミック治療のように、技工所で製作した補綴物を装着するのではなく、経験豊富な歯科医師が、まるで彫刻家のように、患者様お一人おひとりの歯の状態、お顔立ち、ご希望に合わせて、直接美しい歯を作り上げていくことが特徴です。
ダイレクトベニアの特徴
歯をほとんど削らない低侵襲性
ダイレクトベニアの最大の特徴は、健康な歯質をほとんど削合する必要がないという点です。多くのケースでは、歯の表面を軽く粗造化する程度の処置で対応でき、大切なご自身の歯質を最大限温存することができます。
歯質を削合しないということは、単に「削らずに済む」というだけではありません。歯の強度を維持できること、神経から離れた位置での処置となるため治療後の知覚過敏のリスクが低いこと、そして将来的に別の治療法を選択したくなった際の選択肢を広く残せることを意味します。長期的な視点で見れば、これは非常に大きな利点といえるでしょう。
短期間での治療完了
ダイレクトベニアは、セラミック治療で必要だった型の採得や技工所での製作工程が不要です。歯科医師が直接、患者様のお口の中で仕上げるため、多くのケースで一回のご来院で治療を完了できます。
治療時間は症例の難易度や範囲によって異なりますが、一般的には三十分から一時間程度です。お忙しい毎日をお過ごしの現代女性にとって、短期間で治療が完了するという点は、大きな魅力ではないでしょうか。
また、結婚式やパーティー、重要なプレゼンテーションなど、特定のイベントが間近に控えている方にとって、短期間で審美性を改善できることは大きな安心材料となります。
経済的な負担が少ない
ダイレクトベニアには、費用面でも注目すべき特徴があります。むし歯によって歯が欠損している場合、その修復治療としてコンポジットレジンで修復を行うときには、保険診療が適用されることがあります。
保険診療が適用される場合、一本あたりの費用は再診料等を含めて二千円程度となり、セラミック治療と比較して大幅に費用を抑えることができます。これは、セラミック治療費用の約五十分の一から百分の一という計算になります。
ただし、保険診療には明確な基準が設けられています。むし歯や外傷によって歯が欠損している場合には保険が適用されますが、純粋に審美的な改善を目的とする場合には自由診療となります。ご自身のケースが保険適用となるかどうかは、歯科医師の診断が必要ですので、まずはご相談されることをお勧めいたします。
修正や調整がしやすい
ダイレクトベニアのもう一つの大きな特徴は、治療後の修正や調整が比較的容易であるという点です。セラミック治療の場合、一度装着した補綴物に問題が生じると、全体を除去して作り直す必要があります。
しかしダイレクトベニアの場合、わずかな欠損や着色であれば、その部分のみを研磨したり、材料を追加したりすることで修復できることが多いのです。この「修正しやすい」という特性は、長期的なメンテナンスにおいても重要な利点となります。
将来的な選択肢の保持
ダイレクトベニアは、歯質の削合量が非常に少ないため、将来的に「やはりセラミック治療を選びたい」と思われた際にも、その選択肢が残されています。
人生のステージが変化し、経済的な余裕が生まれたとき、あるいは審美性へのこだわりが変化したとき、より永続的な美しさを求めてセラミック治療に移行することも可能です。
この「後から選択できる」という特性は、特に二十代から三十代の若い世代の方にとって、重要な要素となるでしょう。
ダイレクトベニアで使う材料
豊富な色調のバリエーション
象牙質の色調、エナメル質の色調、透明度の異なる色調など、多様な色調が用意されており、患者様の天然歯の色調に細かく適合させることができます。また、これらを複数の層に重ねることで、天然歯特有の複雑な色合いと透明感を再現することができます。
(注:保険適用のコンポジットレジンは、色調のバリエーションが限定されています)
光で固まるシステム
特殊な波長の光を照射することで化学反応が生じ、材料が硬化します。このシステムにより、歯科医師は硬化のタイミングをコントロールしながら、じっくりと形態を整えることができます
研磨性能
硬化後、専用の器具で丁寧に研磨することで、天然歯のような滑沢で光沢のある表面に仕上げることができます。
セラミックとダイレクトベニアの比較
ダイレクトベニアとセラミック治療を、いろいろな角度から比べてみましょう。
見た目の綺麗さ
セラミック治療
陶材という素材が本来持つ透明感と光沢により、非常に自然で美しい仕上がりとなります。特に光の透過性については、天然歯に最も近い特性を持っています。また、色調も安定しており、長期間にわたって変色しにくいという特徴があります。
ダイレクトベニア
多様な色調の材料を複数の層に重ねる技法により、天然歯に近い色合いと透明感を再現できます。ただし、この仕上がりの美しさは、施術を行う歯科医師の技術力と審美的センスに大きく依存します。経験豊富で高い技術力を持つ歯科医師による治療であれば、セラミックに劣らない美しさを実現することも可能です。
耐久性
セラミックは圧縮に対して強く、すり減りにくいという特徴があります。そのセラミックは圧縮強度が高く、摩耗しにくいという特性があります。そのため、長期間にわたって形態が維持されやすいです。一方、コンポジットレジンは比較的軟性の材料であるため、経年的にわずかに摩耗したり、着色したりする可能性があります。
壊れたときの対応
セラミックは非常に硬質である反面、強い衝撃を受けると破折することがあります。破折した場合には、全体を除去して作り直す必要があります。それに対して、ダイレクトベニアは部分的な欠損であれば、その部分のみを修復することができます。
色の安定性
セラミックは色調が非常に安定しており、長期間にわたって変色することはほとんどありません。コンポジットレジンは、食生活や口腔衛生の状態によって、経年的にわずかに着色する可能性があります。ただし、定期的な研磨により、ある程度の着色は除去することができます。
歯質の保存性
この点では、ダイレクトベニアにはっきりとした利点があります。セラミックこの点においては、ダイレクトベニアに明確な優位性があります。セラミック治療では、セラミックの厚みを確保するために一定量の歯質削合が必要ですが、ダイレクトベニアでは最小限の処置で済みます。
長期的な歯の健康を考慮すると、できる限り多くの健康な歯質を温存することが望ましいとされています。この観点から、ダイレクトベニアは歯に優しい治療法といえるでしょう。
費用
先述の通り、むし歯の治療と併せて行う場合には保険適用となることがあり、この場合の費用負担は大幅に軽減されます。セラミック治療が一本あたり十万円から二十万円であるのに対し、保険適用のダイレクトベニアは約二千円です。
仮に前歯二本を治療する場合、セラミックでは二十万円から四十万円程度の費用となりますが、保険適用のダイレクトベニアであれば四千円程度で済みます。この差額は、生活を豊かにする他のことにも活用できる、決して小さくない金額です。
治療にかかる時間
セラミック治療が通常二週間から一ヶ月程度を要するのに対し、ダイレクトベニアは多くのケースで一回のご来院で完了します。時間的な負担が少ないことも、お忙しい日々をお過ごしの現代女性にとって重要なポイントとなるでしょう。
ダイレクトベニアが向いているケース
ダイレクトベニアは、次のようなケースで特に向いている治療法といえます。
- 軽度から中くらいの歯の変色
- 小さな範囲の歯の欠けや割れ
- 軽度の形の問題
- 前歯の隙間などの小さな歯並びの問題
- できるだけ歯を削りたくない方
- 短い期間で見た目を改善したい方
- 費用を抑えたい方
- まずは審美治療を試してみたい方
- 将来の選択肢を残しておきたい方
ダイレクトベニアが向いていないケース
すべてのケースにダイレクトベニアが適しているわけではありません。次のような場合は、セラミック治療など、他の方法の方が適している可能性があります。
- 歯が広い範囲で欠けている場合
- ひどい変色(神経を取った歯の変色など)
- 強い力がかかる部分
- 歯並びがかなり悪い場合
- とても高い美しさを長く保ちたいという希望が強い場合
どの治療法がご自身に最も適しているかは、歯科医師による詳細な診察と、患者様ご自身のご希望を総合的に考慮して決定していきます。
歯科医師の技術力の重要性
ダイレクトベニアは、歯科医師が直接手作業で形態と色調を作り上げていく治療法であるため、施術を行う歯科医師の技術力と経験が、仕上がりの美しさに直接的に影響します。
必要な専門技術
色調の診断と再現能力
患者様の天然歯の色調を正確に診断し、適切な材料を選択する能力が必要です。また、多様な色調を複数の層に重ね、天然歯特有の複雑な色合いと透明感を再現する技術が求められます。
形態形成技術
解剖学的に正しく、かつ審美的に美しい歯の形態を、直接盛り付けによって作り上げる技術が必要です。これには、歯牙形態学に関する深い知識と、繊細な手技が必要となります。
全体的な調和を見る審美眼
一本の歯だけでなく、お顔全体とのバランス、左右の対称性、隣接歯との調和など、全体的な審美性を評価する審美眼が重要です。
精密な作業のための拡大視野
拡大鏡や歯科用顕微鏡を使用した拡大視野下での治療は、より精密な形態形成と研磨を可能にし、治療成績の向上に大きく寄与します。
豊富な臨床経験:多様な症例を経験し、多くの患者様の要望に応えてきた臨床経験は、何よりも重要な要素です。
これらの技術と経験を兼ね備えた歯科医師による治療を受けることが、満足のいく美しい結果を得るために非常に重要です。
治療後のケアとメインテナンス
定期的な歯科検診
ダイレクトベニアは、経時的にわずかな変化が生じる可能性があります。着色、軽度の摩耗、辺縁部の状態などを定期的にチェックし、必要に応じて研磨や小範囲の修復を行うことで、美しい状態を長く維持することができます。
3ヶ月に1度程度の定期検診をお勧めいたします。
日常のケア
歯磨きで問題ありませんが、次の点に気をつけていただくと、より長持ちします。
色がつきやすい飲み物や食べ物(コーヒー、紅茶、赤ワインなど)のとりすぎを控える
硬いものを前歯で噛むことは避ける
歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、ナイトガード(マウスピース)の使用を検討する
どのくらい持つか
ダイレクトベニアの耐用年数は、口腔内環境、咬合状態、日常のケア、定期的なメンテナンスの実施状況など、さまざまな要因によって変動します。研究によれば、適切にケアした場合、五年から十年程度良好な状態を維持できることが示されていますが、個人差が大きいのも事実です。
着色やわずかな摩耗が生じた場合には、研磨や部分的な修復で対応できます。より広範囲に劣化が生じた場合には、全体的に再治療を行うこととなります。
治療をお考えの方へ
前歯の審美的なお悩みは、日常生活における自信や、人とのコミュニケーションに大きな影響を与えます。長い間お一人で悩んでいらっしゃった方も多いのではないでしょうか。
治療法を選択する際には、審美性、機能性、歯質の保存性、費用、治療期間など、多角的な視点から検討することが大切です。また、ご自身が何を最も重視されるか――非常に高い審美性なのか、歯質の保存なのか、費用の抑制なのか――を明確にすることも、適切な治療法を選択するために役立ちます。
歯科医師に遠慮なくご希望をお伝えし、十分な説明を受けた上で、納得のいく治療法を選択されることをお勧めいたします。疑問や不安がございましたら、何でもお尋ねください。
ダイレクトベニアについてのまとめ
ダイレクトベニアは、前歯の見た目を改善するための治療法の一つで、セラミック治療とは違ういろいろな特徴があります。
主な特徴
- 健康な歯をほとんど削らずに済む
- 多くの場合1回の通院で治療が終わる
- むし歯がある場合、保険診療が使えることがある
- 修正や調整が比較的簡単
- 将来他の治療法を選ぶ余地が残る
- 費用負担が大幅に軽くなる(保険が使える場合)
考えておきたい点
- 治療する歯科医師の技術力で仕上がりが大きく変わる
- セラミック治療と比べて、年月が経つと色がついたりすり減ったりする可能性がある
- すべてのケースに使えるわけではない
- どのくらい持つかは個人差が大きい
前歯の見た目で悩んでいる方にとって、ダイレクトベニアは、セラミック治療とは違う選択肢として、検討する価値のある治療法です。特に、できるだけ歯を削りたくない方、費用を抑えたい方、短い期間での改善を希望する方にとって、魅力的な選択肢になるでしょう。
ただし、どの治療法が最も合っているかは、一人ひとりの歯の状態、希望、ライフスタイルによって違います。歯科医師による十分な診察と説明を受けて、自分が納得した上で治療法を選ぶことが何よりも大切です。
美しい笑顔は、あなたの人生をより豊かに、より輝かせてくれます。前歯の見た目の悩みから解放されて、自信を持って笑顔を見せられる日々が訪れることを願っています。
どのような小さなお悩みでも、まずは専門家にご相談されることをお勧めいたします。あなたに最適な治療法がきっと見つかるはずです。
まずは、あなたの歯がダイレクトベニアでどれくらい綺麗になるのか、確かめに来るだけでも構いません。
前歯をキレイにしたい方はぜひご相談ください。
大変申し訳ございません、お電話ではご質問にお答えできません。受診された際に歯科医師にお尋ねください。
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