歯科治療には、保険診療と自由診療があります。

保険診療は、すべての国民が等しく医療を受けられるように設計された、優れた制度です。当院がこの制度を否定することはありません。

ただ、保険診療には「使える素材」と「選べる工程」にあらかじめ枠があります。このページでは、その枠がどういうもので、なぜ当院がその枠の外で診療しているのかを、できるだけ率直にお話しします。

保険の歯と自由診療の歯は、何が違うのか

たとえば、前歯に白い被せものをする場合を考えてみてください。

保険診療でも白い被せものは選べます。しかし、使える素材は制度で決まっており、その多くは工場で均一に成形されたブロックを機械で削り出してつくられます。色は既製品の中から一番近いものを選ぶ形になります。

当院の歯は違います。セラミストが、あなたの隣の歯の色を見ながら、陶材を一層ずつ手で重ねていきます。天然の歯は一色ではありません。根元は少し濃く、先端に向かって透明感が増し、表面には長年かけて刻まれた微細なテクスチャーがある。この複雑さを再現するには、既製品のブロックでは限界があります。

もうひとつ大きな違いがあります。保険の被せものは、噛み合わせの微調整を口の中で行います。つまり、装着してから削って合わせる。当院では、装着する前に模型の上でセラミストが噛み合わせを精密に確認し、調整を済ませます。口の中で大きく削る必要がないので、完成品の精度が違います。

なぜ、この工程でなければならないのか

セラミストがあなたの歯を正確に再現するためには、私が渡す情報の質がすべてです。

咬み合わせの記録、歯肉の形態、隣の歯との位置関係、顔全体とのバランス——これらを一つずつ精密に記録して、セラミストに伝えます。情報が足りなければ、セラミストはどれほど腕が良くても「想像」で補うしかなくなる。想像で補った歯は、口に入れたときに必ずどこかが合いません。

この工程を省略せずに進めると、一人の患者さんにかかる時間は自然と長くなります。結果として、当院が1日に診られるのは3名が上限です。これは理念ではなく、この素材とこの工程を選んだことの構造的な帰結です。

再治療を繰り返さないために

歯科治療で見落とされがちな事実があります。歯は、治療するたびに削られます。そして、削った分は二度と戻りません。歯科治療において、最も大きなコストは「やり直し」です。

最初の治療で銀歯を入れる。数年後にその銀歯の下でむし歯が再発する。銀歯を外して、さらに削って、また被せる。これを繰り返すたびに歯はどんどん薄くなり、最終的には抜歯しなければならなくなる。この「やり直しの連鎖」が、歯を失う最大の原因の一つです。

当院が目指しているのは、この連鎖を最初の一手で断つことです。原因を正確に診断し、再発しにくい素材を選び、精度の高い工程で仕上げる。一度の治療としての費用は高額です。しかし、10年後、20年後にやり直しが発生しないことを目指す治療と、数年ごとにやり直す治療を比べたとき、どちらが本当のコストかは、一概には言えません。