診療理念は、治療の方法や手順を決めるもとになる考え方です。ここでは、修復・補綴治療で何を回復し、治療後にどのような状態を目指すのかをお話しします。
当院では、食事や会話の中で、治療した歯を必要以上に気にせず過ごせる状態を目指しています。歯と歯を支える組織の健康、噛むことや話すこと、ご本人が望む歯や口元の見た目を、修復・補綴治療でともに大切にしています。
歯の健康と、噛むことや話すこと
残っている歯を大切にしながら、食事や会話に支障のない状態を目指します。治療する歯に加えて、ほかの歯や歯を支える組織、口全体の噛み合わせも含めて、歯や口の健康と働きを考えています。
治療した歯を使って日々の生活を送ることを考え、歯や周囲の組織の健康を保つことを大切にしています。ご本人が感じる噛みやすさや話しやすさと、医療として必要な健康や機能の条件を、ともに治療の目標に含めています。
患者さんのご希望と、治療後の感じ方
噛むことや話すこと、歯や口元の見た目、以前の治療による違和感について、ご本人が改善したいことや望む変化を、治療を考える出発点にしています。
患者さんのお言葉を具体的な治療に結びつけるときには、私たち自身の解釈が加わります。私たちが希望を理解し、治療の目標に達したと考えていても、ご本人が実際に噛んだり話したりするときの感じ方や、見た目への思いまで、十分に捉えられているとは限りません。
そのため、私たちが診察で確かめる歯や口の状態に加えて、ご本人が治療後に感じる違和感や気になる点も、治療の評価に含めます。
歯科医師の考える美しさと、ご本人が望む美しさ
歯や口元の見た目を整える治療では、ご本人が望む変化を大切にします。「白くしたい」「形を変えたい」といったご希望には、これからどのような口元で暮らしたいかという思いも含まれていると考えています。
歯科医師がふさわしいと考える美しさと、ご本人が望む美しさは、いつも一致するとは限りません。ご本人が望まない変化であれば、歯がどれほど整っていても、治療の目的を果たしたとはいえません。
自然に見える口元とは
白く整った歯を望まれる場合も、ご希望の白さや形と、顔立ちや口元へのなじみ方を併せて考えます。控えめな白さや適度な不揃いを、すべての方に共通する理想として当てはめることはありません。
白く整った歯が、その方の顔立ちや表情によくなじんで見えることもあります。一方、天然歯の特徴を細かく再現しても、周囲の歯との関係によって目立って見えることがあります。
過去の治療による違和感をなくしたい場合にも、別の「自然な歯」という型に置き換えることを目標にはしていません。私たちの好む型を当てはめると、ご本人にとっての調和を見落とすことがあるためです。
ご自身の口元だと感じられること
治療後の歯や口元をご自身の一部として感じられることを目指します。食事や会話をするときの感覚も、鏡で口元を見たときの感じ方も、ご本人の実感として大切にしています。
周囲から似合って見える口元と、ご本人が自分の口元だと感じられる状態は、同じとは限りません。歯科医師が違和感のない状態だと考えていても、ご本人は自分の顔になじまないと感じることがあります。
私たちが顔立ちや表情から読み取れることだけでは、その方らしさのすべてを捉えることはできません。
ご本人が自分の口元だと感じられるのは、昔の歯をそのまま再現した場合だけではありません。以前より白い歯や形を変えた歯であっても、今の自分の口元として感じられることがあります。私たちは、ご本人がこれからの自分に望む変化も大切にしています。
治療後に目指す状態
食事や会話の中で、治療した歯を必要以上に気にせず過ごせる状態を目指しています。
私たちは、歯の失われた部分や失った歯を補うことから、治療後の歯や口元をご自身の一部として感じながら日々を過ごせることまでを、修復・補綴治療の目標と考えています。
診療理念の背景はこちら
作り手が考える理想像と、患者さんご自身の口元として成り立つことには、違いがあります。 その違いについては、次の臨床論考で、考え方の背景を詳しく述べています。


