PHILIPPE HURELのGORDON

Written by 田中良一 表参道歯科アールズクリニック院長

待合室で使っている一人掛けのチェア、PHILIPPE HUREL(フィリップ・ユーレル)のGORDONは、多くの家具店を回り、実際に座り比べて選んだ椅子です。ソファやチェアを探していた中で、私には飛び抜けて座り心地が良く感じられました。

今回は、GORDONを選んだ経緯と、この椅子を手がけるフランスの家具メーカーについて紹介します。

完全貸切の診療に合わせた椅子選び

当院は、同じ時間帯にほかの患者さんをお迎えしない完全貸切で診療しています。院内に置く家具を選ぶ際にも、その診療体制に合わせて、一人掛けのソファやチェアを探していました。

複数の患者さんが並んで待つための座席を用意する診療体制とは、家具を選ぶ際の条件も変わります。私が探していたのは、一人で腰掛けるための椅子でした。「一人掛け」という条件が先にあり、その中で実際の座り心地を確かめながら選びました。

そこで、多くの家具店に足を運び、実際に座って確かめました。その中で出会ったのがGORDONです。座り心地の良さが強く印象に残り、院内で使う椅子として選びました。

家具の写真からは、形や色、部屋に置いたときの雰囲気をある程度想像できます。一方で、座ったときの感触は、自分で試してみて初めて分かります。GORDONを選ぶ決め手になったのも、そうした実際の感覚でした。

座り心地には、座面の硬さだけでなく、奥行きや背もたれの角度、肘を置く位置などが関わります。同じ椅子でも、座る人の体格や姿勢によって感じ方は変わります。大きさや形を資料で確認することと、体を預けたときの感覚を確かめることは、それぞれ椅子を選ぶための手掛かりになります。

多くの店で座り比べたからこそ、GORDONに座ったときの違いが強く印象に残りました。「座り心地が良かった」という短い言葉になりますが、私がこの椅子を選んだ理由は、その実感にあります。

フランスの家具工房から始まったPHILIPPE HUREL

PHILIPPE HURELの歴史は、1911年、モーリス・グージェがフランスのクーロンに設立した家具工房「Fabrique de Meubles de Coulombs」に始まります。当初は、ルイ16世様式の寝室や食堂の家具などを製作していました。

家業はピエール・ユーレルへ、そして息子のフィリップ・ユーレルへと引き継がれます。フィリップは1980年、歴史的な様式の家具から、現代的なデザインの家具へと製作の方向を転換しました。長く続く家具づくりの技術を背景に、デザインを変えてきたメーカーです [1]。

創業時の家具と、現在紹介されている家具とでは、形や装飾の印象が大きく異なります。歴史の長い工房であっても、昔の形をそのまま作り続けるとは限りません。PHILIPPE HURELでは、家具を製作する技術を受け継ぎながら、暮らしの中で使われる形を変えてきたことが、沿革から読み取れます。

木工と仕上げを支える職人の仕事

PHILIPPE HURELの家具づくりには、木材の加工や組み立てに加えて、塗装や革の着色など、さまざまな専門の仕事があります。日本で製品を紹介するカッシーナ・イクスシーの資料でも、細かな色の違いをつくり分ける塗装や、伝統的な技法を現代のデザインに取り入れる姿勢が紹介されています [2]。

木部は、材料を切り出し、形を整え、接合してから、表面を仕上げていきます。PHILIPPE HURELの公式沿革では、2006年に創業地の敷地内へ新しい製造施設を建て、切削から組み立て、接着、塗装までを同じ場所で行う体制が紹介されています [1]。

完成した家具を見ると、木部の線や色を一つのまとまりとして受け取りますが、製作では形を作る作業と色や艶を整える作業を重ねています。工房について知ると、木の接合部や曲面、塗装の見え方など、完成品の細部にも目を向けやすくなります。

2007年には、フランスの優れた職人技や産業技術を持つ企業を認定する「Entreprise du Patrimoine Vivant」の認定を受けています。家具の外観だけでは分かりにくい加工や仕上げにも、長年受け継がれてきた技術が使われています [1]。

一人掛けのアームチェア、GORDON

GORDONは、背もたれと肘掛けを備えた一人掛けのアームチェアです。カッシーナ・イクスシーの紹介では、デスクと組み合わせた姿が掲載されています。私が一人掛けのソファやチェアを探していたときに出会ったGORDONも、こうした家具の一つでした [2]。

紹介資料に掲載された寸法は、幅660mm、奥行き610mm、高さ770mmです。幅66cm、奥行き61cmの一人掛けで、肘掛けまで含めた外形を数字でも知ることができます [2]。

家具の寸法は、部屋に置けるか、周囲にどれほど空間が残るかを考えるための情報です。一方、座面や背もたれに触れたときの感触までは数字に表れません。GORDONも、アームチェアという分類や寸法に加えて、座って確かめた経験とともに記憶に残っている椅子です。

メーカーの歴史や製作の背景を知ると、院内で日々使っている家具にも、目を向けるところが増えます。形だけでなく、張地や木部の仕上げも、椅子を見る際の楽しみになります。

そして、私にとってGORDONのいちばんの魅力は、選んだときに感じた座り心地です。多くの店を回って座り比べた末に選んだ一脚を、院内で患者さんにお使いいただいています。

執筆者

田中良一

表参道歯科アールズクリニック院長

東京医科歯科大学(現 東京科学大学)卒業、山王病院歯科医長(審美歯科・歯周補綴担当)を経て開業。審美修復をはじめ、歯周病やインプラント分野でも国内外で研鑽を積み、知識と技術を培ってきました。歯や歯ぐきの健康、かみ合わせを確かめながら、修復した歯が顔立ちや表情になじみ、ご本人が自分の口元として感じられることを大切にしています。

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