治療は、診査と治療計画で決めた順序をもとに、各段階の状態を確かめながら進めます。必要な処置に加え、歯ぐきや骨の治癒、仮歯での確認、修復物の製作に必要な時間が異なるため、来院回数と治療全体の期間は症例によって変わります。
限られた部分の修復では、周囲の歯の形や現在のかみ合わせを基準にできる場合があります。一方、歯の欠損や摩耗によってかみ合わせを立て直す場合は、どの歯で噛む力を支え、上下の歯をどの位置で接触させるかを、お口全体で検討します。
治療する本数だけでなく、現在の歯の関係を保って修復するのか、その関係から組み直すのかによって、必要な処置と確認が変わります。以下の処置を必要に応じて組み合わせ、治療の途中でも状態を確かめながら進めます。
下の表は、一般的な治療の進め方です。すべての方に16項目の処置を一律に行うという意味ではありません。実際に必要な処置とその順序は、歯や歯ぐきの状態、治療への反応、修復する範囲によって変わります。
| 01 | プラークコントロール |
| 02 | 歯ぐきの炎症をなくす(歯周初期治療) |
| 03 | 残せない歯や残すと害になる歯を抜歯 * |
| 04 | 虫歯に侵された歯の部分を削り、仮に埋める |
| 05 | おおまかな仮歯 |
| 06 | 根管治療* |
| 07 | おおまかに噛み合わせを整える |
| 08 | 矯正* |
| 09 | 精密に噛み合わせを整える |
| 10 | 歯ぐきの外科手術が必要かどうかの評価 |
| 11 | 歯ぐきの外科処置* | 12 | 外科処置結果の評価 |
| 13 | インプラント手術 |
| 14 | 精密な仮歯 |
| 15 | 最終的な修復物 |
| 16 | メインテナンス |
* は必要な場合のみ アムステルダム教授講義より改編
むし歯や、歯の内部の感染への処置
むし歯がある場合は、除去した後に、健全な歯がどの位置にどれだけ残るかを確認します。その状態によって、直接材料を詰めて修復できるか、歯を覆って保護する必要があるか、土台を作り直す必要があるかを判断します。古い詰め物や被せ物の下は、それを外してから詳しく分かることもあります。
歯の内部の感染などで根管治療が必要な場合には、根の中の細い管を清掃・消毒し、内部を封鎖する処置が加わります。以前の根管治療をやり直す場合は、根の中の材料や土台を取り除く作業が必要になることもあり、根管の形や過去の処置によって必要な時間が変わります。治療後には、再感染を防ぎ、歯を保護する修復へつなげます [1]。
根管治療が必要な場合は、専門医への紹介を含めて治療の順序を決めます。
歯周病の治療が必要な場合
歯周病がある場合は、歯垢や歯石への処置と、日々の清掃方法の改善を行います。治癒のための期間を置いて、歯周ポケットの深さや出血などを再評価し、追加の歯周治療が必要かを判断します。
歯周治療後には、腫れが引くことに伴い、歯ぐきの位置や形が変わる場合もあります。歯の根元が見えたり、歯と歯の間の隙間が広がったりすると、歯の見える長さや修復物との境目の見え方も変わります [2]。
こうした変化を確認して、修復物の形や製作に進む時期を判断します。歯周病で歯を支える組織が減っている場合には、治療後の状態を踏まえて、その歯をブリッジなどの支えに使えるかも評価します。歯周治療の結果が、その後の修復方法や設計に関わるためです [3]。
抜歯やインプラント治療が含まれる場合
抜歯後には、歯ぐきや骨の形が治癒に伴って変化します。失った歯を補う際は、その変化と、どの方法で補うかを合わせて考えます。
インプラントでは、人工歯根を骨の中に入れる手術に加え、骨と結合するための治癒が必要です。骨の量が不足していれば、骨を補う処置を行う場合があります。インプラントの埋入と同時に行える場合と、先に骨を補って治癒を待つ場合とでは、手術の回数と治療全体の期間が変わります [4]。
治癒の進み方には、局所の骨の状態や全身の健康状態なども関わります。そのため、手術の所要時間だけから、歯が入るまでの期間を判断することはできません [6]。
仮歯で、形とかみ合わせを確かめる期間
歯の長さや傾き、かみ合わせを変える治療では、必要に応じて仮歯を用い、最終的な修復物へ移す形を検討します。
前歯の形を変える場合には、口元での見え方とともに、唇との関係、発音、上下の歯の接触を確認します。かみ合わせを立て直す場合には、噛んだときにどの歯が接触するか、顎を動かしたときにどこが当たるかなどを調べます。
診療室での確認に加え、仮歯で食事や会話をしていただくことで分かることもあります。問題があれば、形や接触を調整します。一か所の変更が、見え方、発音、ほかの歯との接触にも影響するため、変更後の状態を改めて確かめます。
ご本人が望む見え方と、機能や歯ぐきの状態を照らし合わせ、必要な確認を経て製作へ進みます。かみ合わせを大きく変える場合と、既存の形を保って修復する場合とでは、確認する内容も、仮歯で生活していただく期間も異なります。
修復物の製作と装着
ダイレクトボンディングのように、口の中で材料を積み重ねて形を作る方法では、修復物を外で製作する期間はありません。ただし、形を変える範囲によっては、事前に型を採って模型上で形を検討し、その形を口の中へ移すための準備を行います。その場合は、準備と修復を別の日に行います。
クラウンやオーバーレイなどの修復物は、型やかみ合わせの記録を採り、それをもとに歯科技工士が製作します。仮歯で形やかみ合わせを調整した場合には、その情報も製作に反映します。口の中で歯への適合、隣の歯との接触、かみ合わせ、色や形を確かめ、必要な調整や修正を経て装着します。
また、周囲の天然歯も明るくしたい場合には、先にホワイトニングを行い、その後の色に合わせて修復物の色を決めることがあります。希望する変化に応じて、組み合わせる治療とその順序が変わる例です。
治療の回数と期間について
一回の診療時間を長く確保し、まとめて行える処置を進めれば、来院回数を減らせる場合があります。しかし、歯ぐきや骨の回復、仮歯で生活したうえでの確認、修復物の製作には、それぞれ別の時間が必要です。処置をまとめることと、治療全体の期間を短縮することは、必ずしも一致しません。
複数の部位を治療する場合も同様です。ある部位の治癒を待つ間に、別の部位の処置を進められることがあります。一方、歯周治療後の状態で修復物の支えを決める場合や、仮歯で確かめたかみ合わせを製作に反映する場合には、順序を守って進める必要があります。全体の期間は、各処置の時間を単純に足したものでも、歯の本数に比例するものでもありません。
診査と治療計画の段階で、見込まれる来院回数と期間をご説明します。その際は、あらかじめ予定できる処置と、治療への反応や仮歯での確認を経て次の予定を決める部分を分けてお伝えします。
治療中に新たに分かった状態や、治癒・調整の経過によって見通しが変わる場合は、何が分かり、どの処置や確認が加わるのか、回数・期間や費用にどう影響するのかをご説明し、ご相談のうえで進めます。
治療後の経過観察とメインテナンス
修復後は、噛んだときの状態や日常生活での使い心地、清掃のしやすさを確認します。必要があれば調整し、その後は定期的なメインテナンスへ移ります。
メインテナンスでは、歯や歯ぐきの状態、修復物の欠けや摩耗、かみ合わせの変化、汚れの残りやすい場所などを確認します。インプラントがある場合は、周囲の組織や被せ物の状態も調べます。
通院の間隔は、歯周病の状態や清掃状況などに応じて検討します。日々の清掃と定期的な診査を続け、変化があれば必要な対応を行います。

