歯科の自由診療と自費診療の違い

Written by 田中良一 表参道歯科アールズクリニック院長

自由診療と自費診療の違い

歯科治療では、「保険治療」と「自費治療」が比較されることがよくあります。一方で、「自費診療」と似た意味で「自由診療」という言葉も使われています。

「自由診療」と「自費診療」は、日常的には同じ意味で使われることがあります。このページでは、費用を誰が負担するかという側面を「自費診療」、保険診療の枠を離れて診療をどのように組み立てるかという側面を「自由診療」として分けて考えます。

自費診療では公的医療保険が適用されず、患者さんが診療費の全額を負担します。

当院がここでいう自由診療は、費用の負担方法だけを指しているわけではありません。保険診療の規則や診療報酬による枠の外で、何を治療の目標とし、そのために必要な診査、診断、治療計画、処置、技工、メインテナンスをどのように組み立てるかという、診療のあり方まで含めて考えています。

費用を自分で負担することと、診療を組み立てること

保険診療と同じ診査や手順を前提に、かぶせ物の材料だけを保険適用外のものへ替えることがあります。この場合、患者さんが費用を全額負担するという意味では自費診療です

ただ、材料を替えただけで、治療の目標や診査の範囲、診療時間の使い方、治療の進め方まで変わるわけではありません。

当院が自由診療の「自由」として考えているのは、高価な材料を自由に選べることだけではありません。患者さんのご希望と口腔内の状態を確認して治療目標を定め、その目標に必要な診査や治療の進め方を組み立てられることです。

そのため、患者さんが費用を全額負担することは自由診療と重なる側面がありますが、費用負担だけで当院が考える自由診療の内容が決まるわけではありません。

自由診療で治療の質が高まる理由

保険診療では、保険給付の対象となる治療方法や材料、診療報酬の算定方法が制度によって定められています。国民が必要な医療を一定の自己負担で受けられるようにするための仕組みですが、歯科医学的に考えられるすべての診査、材料、治療手順、診療時間が保険給付の対象になるわけではありません。

当院では、歯科医療として必要だと考える診査や治療を、制度上の制約によって省かずに行うことを重視しています。その意味で、修復・補綴治療における本来の標準的な診療は、自由診療の中で組み立てるものだと考えています。

自由診療では、患者さんのご希望と口腔内の状態から治療目標を定め、その目標に必要な診査、診断、診療時間、材料、技工、仮歯による確認、メインテナンスまでを治療計画に組み込むことができます。必要な条件を治療目標から決められるため、保険診療の範囲に合わせて治療内容を組み立てる場合よりも、治療の質を高めることができます。

当院が自由診療で確保しているのも、単に長い診療時間や高価な材料ではありません。患者さんのご希望を伺い、歯や歯周組織、かみ合わせを診査し、治療後に目指す状態をあらかじめ検討します。その計画に必要な時間を確保し、仮歯や修復物を段階ごとに確認しながら、必要に応じて歯科技工士とも連携します。

こうした診査や手順の中には、歯科医学上、特別なものではない内容もあります。当院が重視しているのは、通常必要だと考える診療を医院独自の技術として見せることではなく、必要と判断した診査や手順を、保険診療の給付範囲や診療報酬上の制約によって省かずに行うことです。

自由診療の費用に含まれるもの

自由診療の費用は、使用する材料の代金だけではありません。診査と診断、治療計画の立案、診療時間、仮歯を使った確認、歯科技工士による製作、治療後の評価など、治療を進めるために必要な一連の内容に対する費用が含まれます。

必要になる内容は、治療する歯の本数だけでは決まりません。同じ一本の歯でも、周囲の天然歯との関係、歯ぐきの状態、かみ合わせ、過去の治療、ご本人のご希望によって、必要な診査や技工は変わります。

そのため当院では、診査と診断を行ったあとに治療計画を作成し、原則として日を改めて、治療内容と費用の内訳、総額をご説明しています。

当院が考える自由診療

当院では、自由診療を単に「保険が使えない診療」の言い換えとは考えていません。

公的医療保険には、必要な医療を広く提供するという社会保障としての役割があります。一方、当院が行う修復・補綴治療では、患者さんごとの治療目標から必要な診査、時間、材料、技工、治療手順を決め、それらを省かずに行うことを診療の基本としています。

患者さんと治療目標を共有し、その目標に必要な診療を組み立て、選択した内容について歯科医師が責任を負う。当院では、そのために自由診療を選択しています。

参考文献・資料

  1. M. William Lockard Jr. 著、川村邦雄監訳、実藤敦日本語版編集『究極の歯科自由診療―The Exceptional Dental Practice―なぜ、十分では不十分なのか』

執筆者

田中良一

表参道歯科アールズクリニック院長

東京医科歯科大学(現 東京科学大学)卒業、山王病院歯科医長(審美歯科・歯周補綴担当)を経て開業。審美修復をはじめ、歯周病やインプラント分野でも国内外で研鑽を積み、知識と技術を培ってきました。歯や歯ぐきの健康、かみ合わせを確かめながら、修復した歯が顔立ちや表情になじみ、ご本人が自分の口元として感じられることを大切にしています。

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