むし歯や破折、過去の治療などによって歯の一部が失われた場合には、材料を歯に直接接着して補う方法と、クラウンなどで歯を覆う方法があります。歯そのものを失った場合や、複数の歯に治療が必要な場合には、残っている歯との関係やかみ合わせまで含めて治療を考えます。

当院では、まず何をどのように変えたいかを伺い、治療の目標を共有します。そのうえで、残っている歯の量や形、歯ぐきの状態、かむ力のかかり方を調べ、治療方法と材料を検討します。希望する見た目と機能を目指しながら、歯をどのように残し、治療後も維持していくかを考えて計画します [1]。

ご相談内容と関連する治療

過去に治療したセラミックや差し歯が気になる

現在入っている修復物だけでなく、その下にある歯や歯肉、かみ合わせも確認し、やり直すために必要な治療を検討します。

セラミックのやり直し

矯正治療後の歯の形やかみ合わせが気になる

矯正で歯並びを整えた後に、前歯の形や大きさ、残ったすき間が気になる場合には、現在の歯の位置を前提に、修復治療で見た目を整えられる範囲を検討します。ご希望を伺い、歯の幅や長さ、歯ぐきとの関係、かみ合わせを確認します。

矯正後の前歯の形や隙間の治療 矯正後の噛み合わせの不調

前歯の色や形、欠け、すき間を治したい

現在の歯の状態とご希望を確認し、ホワイトニング、ダイレクトボンディング、ポーセレンクラウンなどから治療方法を検討します。欠けを繰り返している場合には、欠けた部分だけでなく、かみ合わせや歯に加わる力も確認します。

前歯の審美歯科

奥歯の詰め物やかぶせ物をやり直したい

残っている歯の量や形、亀裂の有無、かみ合わせなどを確認し、ダイレクトボンディング、クラウン、オーバーレイの適応を検討します。

奥歯のダイレクトボンディング 奥歯のクラウン・オーバーレイ

歯を失った部分や、歯周病を伴う複数の歯を治療したい

残っている歯の状態と上下のかみ合わせを確認し、必要に応じてクラウンやインプラントを組み合わせて治療します。

インプラントと歯周補綴

治療方法の選択

同じように歯の一部が失われていても、残っている歯の状態によって選べる治療方法は変わります。

失われた範囲が比較的小さく、接着に必要な条件が得られる場合には、コンポジットレジンを歯に直接接着するダイレクトボンディングを検討できます。

欠損が大きい場合や、残っている歯を覆って保護する必要がある場合には、クラウンやオーバーレイを検討します。

複数の歯に摩耗や欠損がある場合や、歯を失ったことで上下の歯の関係が変化している場合には、一つの歯だけを見て治療を決めることはできません。歯列全体の関係を確認しながら治療計画を立てます。

材料についても、色だけを見て選ぶわけではありません。修復する範囲に必要な強度や材料の厚み、接着または固定の方法を確認し、前歯では明るさや色調、表面性状なども合わせて検討します [1]。

ダイレクトボンディング

ダイレクトボンディングは、コンポジットレジンを歯に直接接着して、失われた部分や形を修復する方法です。

現在残っている歯の形を利用しながら、必要な部分に材料を加えて修復できる場合があります。ただし、欠損の大きさや歯の位置、かみ合わせによっては、直接修復だけでは必要な形や強度を確保しにくいこともあります。

前歯のダイレクトボンディング・ダイレクトベニア

前歯の欠けた部分を補う場合や、歯と歯のすき間を閉じる場合、歯の形を部分的に変える場合などに検討します。

材料を加えることで希望する形を作れる場合には、歯を削らずに治療できることもあります。一方、材料を加えるだけでは歯が厚くなりすぎる場合や、上下の歯の接触を妨げる場合には、ほかの方法も含めて検討します。

前歯の表面を広い範囲でコンポジットレジンによって覆い、色や形を整える方法をダイレクトベニアと呼びます。

奥歯のダイレクトボンディング

むし歯や古い詰め物を取り除いた部分に、コンポジットレジンを直接接着して形を回復します。

残っている歯の形を利用して直接修復できるため、外で製作した修復物を入れるための形に歯を整える必要がなく、歯質を保存できる場合があります。

適応を判断するときには、残っている歯の量だけを見ているわけではありません。歯がどの位置にどの程度の厚みで残っているか、亀裂がないか、かむ力を受ける部分を支えられるか、接着に必要な環境を確保できるかを確認します。直接修復だけでは残っている歯を十分に保護できない場合には、クラウンやオーバーレイを検討します。

関連ページ

前歯の多色築盛ポーセレンクラウン

人工物らしさを残さないために、色調・光の抜け方・形態まで考えたセラミック修復

以前に入れたクラウンをやり直す場合や、歯の失われた範囲が大きく、歯全体を覆う必要がある場合に検討します。

前歯では、修復する歯だけを見て色や形を決めるわけではありません。隣り合う天然歯との明るさや色調、歯肉との境目、表面性状、歯の輪郭、口元での見え方を確認します。

当院では、前歯のクラウンとして、色調や透過性などが異なるポーセレンを重ねて製作する多色築盛ポーセレンクラウンを基本としています。

Creation陶材を用いて製作し、oral designメンバーのセラミスト、内海賢二氏に製作を依頼しています。院長が診断と治療を担当し、患者さんのご希望や歯の特徴、仮歯で確認した内容を内海氏と共有して、最終的なセラミックに反映します。

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奥歯のジルコニアクラウン・オーバーレイ

奥歯のかぶせ物をやり直す場合や、歯の欠損範囲が大きく、直接詰める方法では残った歯を十分に保護できない場合に検討します。残っている歯の量や形、かむ力が加わる位置を確認して、修復物で覆う範囲を判断します。

クラウンは歯全体を覆う修復物で、オーバーレイはかみ合わせの面を覆う修復物です。どちらを選ぶかは、残っている歯の量や形、亀裂の有無、かむ力が加わる位置などを見て判断します。

ジルコニアは、種類によって機械的性質や光学的性質が異なります。そのため、適応できる部位や必要な厚みも一様ではありません。材料名だけで決めず、修復する範囲とかみ合わせを踏まえて選択します [1]。

歯を保存するための接着とMI(最小限の侵襲)修復

接着技術の進歩によって、残っている歯を利用しながら修復できる範囲は広がっています。

MI(Minimal Intervention)は、健康な歯質を不必要に失わないことを基本とする考え方です。現在では、むし歯を削って詰める処置だけでなく、むし歯の早期発見やリスク評価、予防、必要な範囲に限定した処置、治療後の管理まで含めて考えられています [2]。

修復治療では、接着によって残っている歯を保存できるかを検討するとともに、歯を保護するためにどこまで覆う必要があるか、修復材料にどの程度の厚みが必要かも確認します。

MIでは、削る量だけで治療方法を決めません。残っている歯を保護するために覆う範囲や、修復材料に必要な厚みも考える必要があります。

そのため、歯を保存する際には切削量だけを見るのではなく、修復後に歯と修復物へどのような力が加わるかまで確認して、処置する範囲を決めます。

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複数の歯にわたる修復とかみ合わせの回復

複数の歯に摩耗や欠損がある場合や、過去の治療によって上下の歯の関係を見直す必要がある場合には、一つひとつの歯を別々に治療するだけでは対応できないことがあります。

その場合には、どの歯を維持し、どの歯に治療が必要なのかを確認したうえで、上下の歯の接触や顎の動きまで含めて治療する範囲を決めます。

歯の形やかみ合わせを大きく変える場合には、必要に応じて仮歯を使います。実際に噛んだときや話したときの状態を確認し、必要な調整をしながら治療を進めます。

矯正治療後に歯の形やかみ合わせが気になる場合にも、まず現在の歯の位置を確認します。そのうえで、修復・補綴治療で対応できる範囲と、歯を動かす治療を検討する範囲を分けて考えます。

歯を失った場合の治療

歯を失った場合には、失った部分だけで治療方法を決めることはありません。残っている歯がどの程度の支えを担えるか、上下の歯がどのように噛み合っているかも確認します。

ブリッジやインプラントなど、失った歯を補う方法によって、残っている歯に必要となる処置や加わる負担は異なります。

インプラントを検討する場合には、歯周組織や骨の状態に加えて、治療後の清掃や管理も含めて適応を判断します。複数の歯を治療する場合には、インプラントも口腔全体の補綴治療の一部として位置づけています。

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参考文献・資料

  1. American Dental Association. Materials for Indirect Restorations. 材料の性質、適応、強度・厚み、接着・固定に関する説明を参照。
  2. FDI World Dental Federation. Minimally Invasive Intervention for Caries Management (MIICM). Revised 2026. 歯質の保存、むし歯のリスク評価、予防、低侵襲な処置、治療後の管理に関する考え方を参照。