
Written by 田中良一 表参道歯科アールズクリニック院長
インプラント治療を検討する際は、手術を受ける場所や担当医だけでなく、抜歯が必要か、いつインプラントを埋入するか、術後の仕事や食事にどのような影響があるかも気になると思います。治療の順序は、失った歯の場所や骨・歯ぐきの状態、最終的に装着する歯の形によって異なります。
このページでは、抜歯を伴う場合の判断と治癒、インプラントの埋入時期、骨造成の必要性、手術の担当医と術後の生活について説明します。当院で対応する範囲と、日本歯科大学附属病院などに依頼する処置も区別してご案内します。
インプラント治療の外科処置にあたっての診療方針
抜歯や外科手術では、処置の難しさ、全身の健康状態、手術後に必要となる管理を踏まえて、実施する場所と担当医を決めます。歯を失った部分を補う治療が予定されている場合には、抜歯後の骨と歯ぐきの形が、その後の修復にも関係します。そのため、可能であれば抜歯の前から最終的にどのように歯を補うかを考えます [1]。
当院では、インプラント外科を担当する高森等と、修復・補綴治療を担当する院長が協力して治療計画を検討します。必要な検査や手術の内容によっては、日本歯科大学附属病院などの専門医療機関と連携します。
抜歯の必要性と、その後のインプラント治療
歯を残せるかどうかの判断には、歯根の亀裂、むし歯が広がっている深さ、歯周組織の支持、過去の根管治療の経過、修復に利用できる歯質などが関わります。抜歯が必要と判断された場合でも、抜歯を行う時期と、抜歯後の治療方法を確認しておく意味があります。
欠損を補う方法としてインプラントを検討するときは、隣の歯の状態、かみ合わせ、骨の高さと厚み、歯ぐきの状態などを確認します。前歯では歯ぐきの縁や隣の歯との境目の見え方も関わり、奥歯では噛む力を受ける位置と清掃のしやすさも検討します。
すでに抜歯を予定している場合は、担当医から示された診断や画像検査の情報があれば、初診時にお知らせください。診察前に抜歯の適否を断定することはできません。
抜歯後の骨と歯ぐきに起こる変化
歯を抜いた部分には血餅(血液が固まったもの)ができ、その後、歯ぐきと骨の治癒が進みます。一方、歯を支えていた歯槽骨は、抜歯後に形や量が変化します。抜いた歯の周囲の骨がそのまま残るわけではなく、外側の骨壁に吸収が生じることがあります [1]。
この変化は、後からインプラントを埋入する場合の骨の量や位置、前歯であれば歯ぐきの輪郭にも関係します。抜歯後の形の変化を抑えるため、抜歯窩に材料を用いる歯槽堤保存処置を検討する場合があります。ただし、必要性と見込める効果は、骨壁の残り方、感染の状態、予定する修復方法によって異なります。処置を追加しても骨や歯ぐきの形を完全に維持できるとは限りません [1]。
抜歯とインプラント埋入の時期
インプラントは抜歯と同じ日に埋入する方法のほか、歯ぐきの治癒を待って埋入する方法、骨の治癒を待つ方法があります。抜歯と同日の埋入を即時埋入と呼びます。どの方法が適するかは、骨壁の状態、感染、歯ぐきの厚み、インプラントを安定させられる骨の位置などによって判断します [2]。
即時埋入は通院や治療期間を短くできる場合がありますが、すべての歯に適するわけではありません。前歯では埋入位置や周囲の骨・歯ぐきの状態が、最終的な見た目にも影響するため、短期間で進められることだけを基準にはできません [2]。
また、インプラントを埋入する時期と、歯を装着して噛む力をかけ始める時期は別の問題です。埋入後の安定性や骨との結合、仮歯に加わる力を考慮し、最終的な被せ物を装着するまでの順序を決めます [2]。
骨造成が必要となる場合と手術の負担
インプラントを予定する位置に骨の厚みや高さが不足している場合には、骨を補う処置を検討します。骨造成を行うことで埋入できる条件を整えられる場合がありますが、外科処置の範囲が増え、治癒に必要な期間や合併症の可能性も変わります [1][2]。
骨造成を行うかどうかは、単に骨が少ないという説明だけでは決まりません。どの位置にどの形のインプラントを入れる必要があるか、最終的な被せ物をどこに置くかと関連づけて判断します。広範囲の骨造成など当院内で対応しにくい場合は、大学病院などとの連携を検討します。
当院のインプラント手術を担当する歯科医師
当院のインプラント治療では、院長の田中良一と、日本歯科大学附属病院口腔インプラント診療科の名誉教授である高森等が協力して診療にあたります。高森は、同診療科の初代研修施設長を務め、インプラント外科の診療と教育に携わってきました。
治療計画は高森と院長が共同で検討し、当院で行うインプラント埋入手術は高森先生が担当します。手術には院長も助手として参加し、インプラントの上に装着する被せ物の治療は院長が担当します。外科と補綴のそれぞれについて、担当者が異なることを治療前にお伝えします。
CT検査や広い範囲の骨造成、当院で難しい手術については、日本歯科大学附属病院口腔インプラント診療科との連携を検討します。診査や手術を受ける場所、受診の順序は、症例に応じてご説明します。
抜歯した場合の術後の経過
インプラント治療に先立って抜歯を行う場合は、抜歯部位の感染や骨・歯ぐきの状態を踏まえて、その後の埋入時期を検討します。抜歯とインプラント埋入を同時に行う場合も、別の日に行う場合もあり、処置ごとに術後の注意点が異なります。
親知らずなど、インプラント治療と直接関係しない抜歯の相談については、必要に応じて口腔外科での診察をご案内します。
抜歯・インプラント手術後の痛み・腫れ・出血
抜歯後には一定の出血や痛みが生じることがあります。骨を削る処置や歯ぐきを切開する手術では、腫れや開口しにくさが生じることもあります。症状の強さと続く期間は、処置した部位、手術の範囲、炎症、全身状態によって異なります。
抜歯を伴う場合には、抜歯した部分の血餅が失われるなどして骨の表面が露出し、数日後に強い痛みが出るドライソケット(抜歯窩治癒不全)を生じることがあります。インプラント埋入後の問題と同じものではないため、どの処置を受けた後の症状かを区別して確認します [3]。
強い出血が続く、腫れや痛みが次第に増す、発熱が続く、口を開けにくい状態が悪化する場合は、処置を担当した医療機関に連絡してください。飲み込みや呼吸に著しい支障がある場合には、救急医療が必要です [3]。
術後の仕事・食事・出張などの予定
手術直後は、止血や創部の安静が必要です。食事の内容、歯みがき、うがい、飲酒、運動、服薬などの注意点は手術方法によって変わるため、実際に手術を担当する医療機関からの指示に従ってください [3][4]。
仕事や会食、出張、大切な行事がある場合には、処置の予定を決める前にお知らせください。腫れが目立つ可能性がある手術や、術後の診察が必要な場合には、日程に余裕を持たせる必要があります。何日後から通常どおり過ごせるかを一律に約束することはできません。
複数回の処置が必要な場合や、抜歯後に仮歯で過ごす期間がある場合は、見た目、食事、発音への影響についても事前に確認します。
治療前に確認すること
インプラント手術のご相談では、歯を失った経緯、これまでの処置、服用中の薬、既往歴、治療後にどのような状態を望むかを伺います。特に抗血栓薬、骨代謝に関係する薬剤などを使用されている場合は、処置の計画に影響することがあります。自己判断で服薬を中止せず、薬剤の情報をお知らせください。
診査結果とご希望を踏まえ、当院で担当する処置、専門医療機関へ依頼する処置、治療の順序と費用の見通しをご説明します。
関連ページ
歯を失ったところを治したい/
インプラントと歯周補綴/
治療の進め方/
初診の流れ
文献
- International Team for Implantology (ITI). Placement of Implants in Extraction Sockets. Consensus Statements.
- ITI. Implant Placement and Loading Protocols. 6th ITI Consensus Conference, 2018.
- American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons (AAOMS). Potential Complications of Wisdom Teeth Extractions.
- AAOMS. How Long Does it Take to Heal After Wisdom Teeth Removal?



執筆者
田中良一
表参道歯科アールズクリニック院長
東京医科歯科大学(現 東京科学大学)卒業、山王病院歯科医長(審美歯科・歯周補綴担当)を経て開業。審美修復をはじめ、歯周病やインプラント分野でも国内外で研鑽を積み、知識と技術を培ってきました。歯や歯ぐきの健康、かみ合わせを確かめながら、修復した歯が顔立ちや表情になじみ、ご本人が自分の口元として感じられることを大切にしています。
執筆者経歴ついてはこちら