審美歯科治療で希望に合う治療を選ぶための相談の進め方

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Written by 田中良一 表参道歯科アールズクリニック院長

前歯をもう少し白くしたい。以前に入れたセラミックを、口元になじむものにしたい。歯の形を整えたい。審美歯科の相談では、こうしたご希望を伺いながら、その実現に向けて治療方法を検討します。

診察を受ける前から、希望する色や形がすべて決まっている必要はありません。歯科医師の説明を聞くうちに、それまで言葉にできなかった違和感に気づくこともあります。知らなかった治療方法を知り、ご希望が具体的になることもあるでしょう。

たとえば、歯の色について相談したときに、左右の形の違いや歯ぐきの高さについて説明を受け、それまで気にしていなかった部分も治したいと思うことがあります。

希望が変わること自体を、すぐに問題と考える必要はありません。ただ、「患者さんご本人が希望された」というだけで、十分な説明ができたとは考えていません。歯科医師が何を説明し、その説明を受けて患者さんの希望がどのように変わったのかも確かめる必要があります。

ご相談の際は、気になる部分と、変えたいこと、今のまま残したいところを、分かる範囲でお聞かせください。まだ整理できていなくても構いません。「何となく気になる」という感覚から、院長がお話を伺い、どの部分をどのように感じているのか一緒に確かめていきます。

歯科医師の説明を受けて希望が具体的になる場合

治療について知らないことがあれば、ご自身で考えられる選択肢も限られます。説明を受けて初めて、ご希望に近い治療方法があると分かるのであれば、その説明には意味があります。

米国歯科医師会の倫理原則でも、患者さんの希望や必要性を考慮し、提案する治療と合理的な代替案を説明したうえで、患者さんが治療の意思決定に参加できるようにすることを求めています [1]。

そのため、最初に伺った希望だけをもとに話を終えるのが適切とは限りません。ご希望に応えるために確認しておくべきことや、患者さんがまだご存じでない選択肢をお伝えすることも、診療の一部です。

「歯を白くしたい」というご相談でも、詳しくお話を伺うと、色だけでなく、以前の治療で変わった歯の形も気になっていたと分かることがあります。説明を通して形についての希望も明らかになったのであれば、その点も治療の検討に含める意味があります。

説明を聞いたあとに希望が変わったからといって、その希望を「本当の希望ではない」と扱う必要もありません。知識が増え、治療方法を比較できるようになったうえで選び直した希望には、その方なりの理由があります。
何を知ったことで、どのような変化を望むようになったのか。患者さんと歯科医師の双方が、その経緯を共有できていることが大切です。

歯の色や形の違いを説明するときの注意点

「左右の前歯の長さに違いがあります」という説明は、診察で確認した特徴を伝えるものです。一方、「左右の前歯の長さをそろえる必要があります」という説明には、その特徴を治療で変えるべきだという判断が含まれています。

さらに、「左右をそろえた方が美しく見えます」と説明する場合には、外観についての評価も加わります。

こうした違いを分けずに、すべて「問題があります」と伝えると、患者さんには、その特徴が病気なのか、かみ合わせに関わるのか、見た目の好みに関わるのかが分かりにくくなります。

歯科医師は外観上の特徴を説明したつもりでも、患者さんが「治療しなければならない」と受け取っていれば、説明の受け止め方に行き違いがあります。

歯科医師が見た目について評価してはいけない、ということではありません。どのような特徴があり、その特徴を変えるとどう見えるのかを説明することと、健康上の理由から変更が必要だと説明することを分けてお伝えします。

病気ではないから治療する意味がない、ということでもありません。見た目を変えたいというご希望は、その希望として伺います。ただし、外観の希望に応える治療と、歯の健康を守るために必要な処置では、歯科医師が治療を勧める理由が異なります。

説明の後に治療したい部分が増えた場合の確認

歯科医師が外観上の特徴を説明し、その説明をきっかけに患者さんが気にするようになった場合、その後に生まれた希望には、歯科医師の説明が関わっています。

そのような場合に、「患者さんが希望されたので治療しました」という説明だけで終えると、最初の提案がどのように受け止められたのかという確認が抜けてしまいます。歯科医師の説明が患者さんの希望に与える影響については、歯科医師へのインタビュー研究でも倫理上の懸念が述べられています [2]。

この問題は、意図的に治療を勧めた場合だけに限りません。「もう少し整えた方がよい結果になる」と考えて提案した場合でも、その説明を患者さんがどのように受け取ったのかは確かめる必要があります。

形について説明したあとに「そこも治したい」と言われた場合でも、理由は一つではありません。以前から気になっていたことを言葉にできたのかもしれませんし、新しい選択肢を知って変えてみたいと思ったのかもしれません。「問題がある」と受け取ったために、治療しなければならないと感じた可能性もあります。

ですから、提案に賛成していただけたかだけを確認するのではなく、何を理解し、どのような変化を望んで賛成されたのかまで確認します。
ただし、患者さんに希望の理由を説明していただき、その希望が正しいかどうかを確かめるための質問ではありません。曖昧な気持ちを無理に言葉にしていただいたり、最初の希望との違いを説明していただいたりする必要もありません。

説明をした歯科医師の側が、最初のご相談と、新たに検討している治療との関係を整理し、理解に行き違いがないかを確かめるべきだと考えています。歯科医師が伝えた情報を患者さんが理解しているか確認することは、英国General Dental Councilの基準にも含まれています [3]。

歯科医師が勧める白さと、ご本人の好みが異なる場合

歯科医師の説明は、治療したい部分が増える方向にだけ影響するわけではありません。もともと望んでいた変化を、歯科医師の提案を聞いて控える場合にも、同じような確認が必要です。

たとえば、もう少し白い歯を希望されていた方に、「白さを控えた方が自然に見えます」と説明し、その色を選んでいただいたとします。説明した理由には納得されていても、ご本人としては、もう少し白い歯を好ましく感じているかもしれません。

専門家の説明に納得したことと、実際の仕上がりをご本人が気に入ったことは、同じとは限りません。

自然な見え方を重視する当院でも、この点は確認する必要があります。当院の診療理念では、控えめな白さや適度な不揃いを、すべての患者さんに当てはめることはしていません。どのような口元を好ましく感じるかは、ご本人の希望と顔立ちとの関係から考えるためです。

「自然な方がよい」という理由だけで患者さんの希望を退ければ、医院側の好みを優先することになります。「個性を残す」という考え方であっても、ご本人が変えたいと思っている特徴まで一律に残すべきとは考えていません。

白く整った歯を提案する場合にも同じです。「もっと白くしたいはずだ」「左右をそろえれば喜ばれるはずだ」と歯科医師が先に決めることはできません。

歯科医師としての提案は必要ですが、提案した色や形をご本人がどう感じるかは、提案の医学的な妥当性とは分けて確認します。

治療方法や治療範囲を変更する場合に説明する内容

歯科医師が専門的な立場から治療方法を勧めることは、患者さんを誘導することと同じではありません。専門的な意見を求めて相談されている方に、いくつかの方法だけを並べて「自由に選んでください」とお伝えしても、判断に必要な情報が十分とは限りません。

どの希望に応えるための提案なのか、なぜその方法を勧めるのか、その変化を得るためにどのような処置や負担が必要なのかを、合わせてご説明します。
色についての相談から形の変更へ進む場合や、一部の歯についての相談から、より広い範囲の治療へ進む場合には、追加する治療によって何が変わるのかを説明します。

その際には、処置する歯や削る範囲、費用、期間、主なリスク、将来必要になる可能性のある再治療についてもお伝えします。世界歯科連盟の倫理方針でも、治療する場合と治療しない場合の利益やリスクに加えて、将来関連して必要になる治療や費用について情報を伝えることを求めています [4]。

追加する治療の利点だけを説明して、相談を終えることはしません。治療を追加しなければ何がそのまま残るのか、その点が健康上の問題なのか、希望する外観にどこまで近づけるかという問題なのかも整理します。そこまで分かることで、患者さんは治療を追加する意味を比較できます。

一方、治療範囲を小さくすればよいとも限りません。当初考えていた方法や範囲ではご希望に応えられない場合には、別の方法を提案する必要があります。

その場合にも、「全体を治した方がよい」と結論だけをお伝えするのではなく、当初の方法ではなぜ難しいのか、どの部分を変える必要があるのか、別の方法ではどこまで対応できるのかをご説明します。患者さんの希望を尊重することと、必要な説明を控えることは別のことです。

当院で治療を始める前に行う説明と確認

当院では、院長が直接、お困りのことやご希望、これまでに受けてきた治療について伺い、歯や歯ぐき、かみ合わせなどを診査します。

治療計画は、原則として日を改めてご説明します。診査で分かった状態とご希望を照らし合わせながら、どの治療を勧めるのか、その理由と選択肢をご説明します。小さな範囲の修復などでは、初診当日に治療計画までご説明できる場合もあります。

確認するのは、「どの治療を受けるか」だけではありません。ご本人が変えたいと思っていることと、診査の結果から治療が必要だと判断したことを分けたうえで、治療計画の中でどのように関係するかをご説明します。

説明を聞いたことで希望が広がっても、その日にすべてを決める必要があるとは限りません。急いで対処する必要のある健康上の問題がなければ、いったん持ち帰って考えていただくこともできます。

最初に希望されていた範囲で対応するのか、新たに知った選択肢も含めて検討するのか。それぞれの方法でできることと、必要になる負担をお伝えしながら相談します。

世界歯科連盟も、複雑な治療や、急を要さずご本人が選択して受ける治療では、説明を受けて考えるための期間を設けるべきだとしています [4]。

時間を置くことで、説明を聞いた直後に「よさそうだ」と感じた方法についても、必要な処置や負担まで含めて、ご自身の生活に照らして考えることができます。

治療を見送る場合にも、「何もしない」という一言では終わりません。経過を見てもよい状態なのか、放置すると問題が進む可能性があるのか、健康を保つために必要な処置が別にあるのかを確認します。

見た目を変える治療を見送ることと、歯の病気をそのままにすることは、分けて考える必要があります [4]。

説明で分からなかった点や、決めかねていることがあればお聞かせください。持ち帰って検討する前に、急いで対処すべき問題の有無と、次に相談する時期をご確認ください。改めて相談をご希望の場合は、お電話で「治療計画についてもう一度相談したい」とお伝えいただき、ご予約ください。

仮歯での形の確認と、最終的な修復物への反映

治療を始める前に方法や負担を理解していただくことと、提案した形を実際の口元で確かめることは、それぞれ別の確認です。

当院では、クラウンなどで歯の形や長さを変える際に、必要に応じてプロビジョナルレストレーションという精密な仮歯を用います。鏡で見たときの形だけでなく、発音や唇との関係、上下の歯の接触も確認します。

診療室で確認するだけでなく、仮歯を使って実際に食事や会話をしていただき、気になるところがあれば形や歯の接触を調整します。

鏡で見た形には納得していても、会話をしたときの前歯の見え方には違和感があることもあります。そのような場合に、「説明した通りの形になっています」と確認するだけでは十分ではありません。

どの場面で何が気になるのかを伺い、その感覚が歯の形のどの部分に関係しているのかを歯科医師が検討します。

「少し長く感じる」「以前の口元と違いすぎる」といった言葉だけで、修正する箇所を最初から特定できるとは限りません。患者さんに専門的な形の指定をしていただくのではなく、ご本人の受け止めを伺い、歯科医師が形や機能の確認につなげます。

ただし、歯を削る処置を伴う場合には、その影響を治療方法を選ぶ段階で検討する必要があります。仮歯であとから調整できることを理由に、治療前の説明を省くことはできません。

また、仮歯で形を確認しても、最終的なセラミックの色や光の見え方、表面性状まで同じように確認できるわけではありません。

当院では、前歯のポーセレンクラウンを製作する歯科技工士の内海賢二氏に、写真や診断資料、仮歯で確認した形を共有し、診療の中で検討した内容を最終的な製作へ引き継いでいます。

最初に伺った希望をそのまま製作に伝えるだけではなく、相談と確認を重ねる中で分かったことまで含めて共有します。ご希望を伺うこと、仮歯で形を確認すること、その結果を最終的な修復物に反映することを、一続きの治療として考えているためです。

希望する見た目と歯の健康が両立しない場合の対応

ご本人が仕上がりをどのように感じるかを大切にすることと、治療の判断をすべて患者さんに委ねることは同じではありません。世界歯科連盟も、患者さんの希望を尊重する原則について、専門的な基準との両立を条件として示しています [4]。

希望する変化を得るための負担が大きすぎる場合や、歯や歯ぐきの健康、かみ合わせを損なうおそれがある場合があります。また、期待されている結果に十分な見通しを持てないこともあります。

そのように判断したときは、なぜその治療を勧めにくいのかをご説明し、別の治療方法や、目標とする変化の調整を一緒に検討します。

「患者さんが希望されたから」という理由だけで、医学的な判断を省くことはできません。同時に、医学的な問題が見つからないことだけを理由に、ご本人が感じている外観の違和感を否定することもできません。医療として確認していることと、ご本人が感じていることは、同じ内容ではないからです。

「自分では決めきれないので、提案してほしい」というご相談でも構いません。最初から色や形を正確に指定していただく必要はなく、説明を聞いて希望が変わることもあります。

当院では、提案に賛成していただいた時点で、ご希望をすべて理解できたとは考えていません。何を変えたいのか、提案した色や形をどのように感じるのかを確かめ、その内容を、歯の健康や機能を保つための判断と合わせて治療へ反映します。

歯科医師の説明によって希望が変わったときには、その変化を患者さんだけの判断として扱わず、説明した医院の側も、どのように受け止められたのかを確かめ直す必要があると考えています。

ご相談の際は、気になる部分や、避けたい見え方を、分かる範囲でそのままお聞かせください。

ご希望に合う治療のご相談

治療方法や希望する色・形が決まっていなくてもご相談いただけます。現在気になっていることからお聞かせください。当院で診査を受け、治療を検討される方は、通常の初診としてご予約ください。

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執筆者

田中良一

表参道歯科アールズクリニック院長

東京医科歯科大学(現 東京科学大学)卒業、山王病院歯科医長(審美歯科・歯周補綴担当)を経て開業。審美修復をはじめ、歯周病やインプラント分野でも国内外で研鑽を積み、知識と技術を培ってきました。歯や歯ぐきの健康、かみ合わせを確かめながら、修復した歯が顔立ちや表情になじみ、ご本人が自分の口元として感じられることを大切にしています。

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