セラミックのかぶせ物の寿命

Written by 田中良一 表参道歯科アールズクリニック院長

セラミックのかぶせ物には、10年を超えて使い続けられているものがあり、15年間の経過を調べた研究もあります [1]。ただし、研究で示された年数だけで、ご自身の歯を何年使えるかが決まるわけではありません。

かぶせ物そのものに問題がなくても、その下に残っている歯にむし歯や破折などが起これば、使い続けられなくなることがあります。反対に、歯の状態に問題がなくても、セラミックが欠けたり、かぶせ物が外れたりすることがあります [1][3]。

セラミックのかぶせ物を長く使うためには、材料そのものの耐久性だけでなく、そのかぶせ物を支えている歯の状態も合わせて考える必要があります。

かぶせ物の使用期間と途中の不具合

かぶせ物が外れても、原因を調べたうえで付け直し、同じかぶせ物を使い続けられる場合があります。小さく欠けた部分を補修して、そのまま使用できることもあります。

そのため、研究で「長く使えている」と報告されていても、その期間中にまったく処置を受けなかったとは限りません [1][8]。

研究では、修理や再装着などを行いながら使用を続けられている割合を「生存率」、研究で定めた問題が起こらずに経過した割合を「成功率」として、分けて示すことがあります [1]。

かぶせ物の寿命を考えるときには、何年間使えたかだけでなく、その途中にどのような問題が起こり、どのような処置が必要だったのかも確認する必要があります。

かぶせ物を支える歯の状態

鏡で見えるのはセラミックの表面ですが、その内側にはご自身の歯が残っています。歯質が十分に残っている歯と、むし歯や過去の治療によって大きく失われている歯では、かぶせ物を支える条件が異なります。

根管治療を受けた小臼歯を6年間調べた臨床試験でも、残っている歯の壁の数と、修復後の経過との関連が報告されています [2]。

診察では、残っている歯の量だけでなく、歯質の厚みや亀裂の有無、根の状態、歯を支えている歯ぐきや骨の状態も確認します。

また、根管治療後の歯をクラウンで修復する際には、かぶせ物の縁より上に健全な歯質が帯状に残り、その部分をクラウンが取り囲めるかどうかも確認します。このような構造によって歯の破折に抵抗しやすくなる働きを「フェルール効果」と呼びます [3]。

失われた歯質を土台の材料で補えば、かぶせ物を装着するための形を整えることはできます。ただし、土台を作っても、失われた歯の構造そのものが元に戻るわけではありません。

根の中に入れる「ポスト」という支柱も、主な役割は土台を保持することであり、ポストを入れることで歯根そのものが強くなるわけではありません [3]。

やり直しの治療で古いかぶせ物の下を詳しく調べるのは、こうした条件を確認するためです。新しいセラミックの種類を決める前に、現在残っている歯で新しい修復物をどのように支えられるかを確認します。

セラミックの種類と必要な厚み

セラミックには、ガラスを含む材料やジルコニアなど、性質の異なる種類があります。一種類の材料でかぶせ物全体を作る方法もあれば、内側のフレームの上に陶材を重ねて作る方法もあります。それぞれ、強さや光の通り方、適した使い方が異なります [4]。

かぶせ物の破損には、材料の種類だけでなく、完成した修復物の厚みや形、噛み合う歯がどこに接触するかも関係します。フレームの上に陶材を重ねる場合には、その陶材を内側からどのように支えるかも検討する必要があります [5]。

そこで問題になるのが、セラミックに必要な厚みを確保することと、ご自身の歯をできるだけ残すことの両立です。

セラミックに必要な厚みを確保するには、そのための空間が必要になります。一方、空間を作るために歯を多く削れば、かぶせ物を支える歯質が少なくなります。そのため、材料に必要な厚みを確保しながら、必要以上に歯を削らないように形を考えます [3][5]。

材料を選ぶときには、材料名や強度だけを見て決めるのではなく、その歯にどの程度の歯質が残っているか、修復物にどれだけの空間を使えるかを確認します。その材料に必要な厚みや形を確保できるかまで含めて、使用する理由を検討します。

かぶせ物が外れた場合の判断

セラミックが割れていなくても、歯との固定が失われれば、かぶせ物は外れます。固定には、歯を整えた形による保持と、歯と修復材料との接着が関わります。使用するセラミックと歯の状態に合わせて、固定方法や材料表面の処理を選ぶ必要があります [4]。

一度外れたかぶせ物でも、再び装着して使える場合があります。ただし、付け直せるかどうかは、セラミックや歯に破損がないか、むし歯が生じていないか、なぜ外れたのかを調べて判断します。外れた原因がそのまま残っていれば、単に付け直すだけでは十分でないことがあります [1][8]。

かぶせ物の内側にある歯がむし歯で失われていれば、まずその歯を治療し、治療後の歯の形に合った修復方法を考える必要があります。かぶせ物そのもの、固定していた部分、その下にある歯をそれぞれ確認し、再装着できるのか、新しく作り直す必要があるのかを判断します。

歯ぎしりと食いしばりによる負荷

かぶせ物には、食事などを通じて繰り返し力が加わります。セラミックの破折は、一度だけ大きな力を受けたときに起こるとは限りません。小さな亀裂が繰り返しの負荷によって少しずつ進み、時間が経ってから破折することもあります。これは材料の「疲労」と呼ばれる現象に関係します [5]。

そのため診察では、噛み合わせたときや顎を動かしたときに、どこへ力がかかっているかを確認します。

歯ぎしりや食いしばりが疑われる場合には、歯のすり減り方やかぶせ物の状態、顎の筋肉の症状、ご本人やご家族が気づいていることなども参考にします [6]。

必要に応じて、歯を保護する装置の使用や、日中の食いしばりに気づいて減らすための対応を検討します [6]。かぶせ物が欠けた場合にも、材料だけを見るのではなく、どのような力が加わっていたのかを確認し、材料や修復物の形を見直す必要があるかを考えます。

むし歯予防と治療後の診察

セラミックそのものがむし歯になることはありませんが、その下や周囲に残っている歯には、むし歯が生じることがあります。歯ぐきが下がって歯根が露出した場合には、その部分についても予防が必要です [7]。

日々のお手入れでは、かぶせ物と歯の境目や、歯と歯の間を清掃します。フッ化物配合歯磨剤を使うことや、糖を含む飲食物を頻繁にとる習慣を見直すことも、むし歯予防に関わります [7]。

診察では、汚れが残りやすい場所を確認し、お口の状態に合わせた清掃方法をご説明します。

治療後の診察では、清掃状態だけでなく、かぶせ物の縁、緩みや欠けの有無、周囲の歯ぐき、かみ合わせなども確認し、必要に応じてエックス線写真を使います。初期のむし歯には通常症状がないため、痛みがないという理由だけで問題がないとは判断できません [7][8]。

当院では、治療を担当した院長がメインテナンスも行い、拡大視野のもとで歯や修復物の表面、境目の状態を確認しています。変化が見つかった場合には、その状態に応じて清掃方法を見直し、必要な処置を検討します。

ただし、定期的に診察していても、すべての細かな亀裂を見つけたり、いつ破折するかを予測したりすることはできません。その時点で確認できる変化を見つけ、必要な予防や処置を考えることが、治療後の管理の役割です。

補修や交換を判断する根拠

かぶせ物を交換するかどうかは、装着してから何年経ったかだけで決めるものではありません。現在どのような問題が起きているかを確認して判断します。

小さな欠けや表面の着色であれば、研磨や補修によって対応できる場合があります。一方、破損やむし歯が広い範囲に及んでいる場合、補修では必要な形や機能を回復できない場合、あるいはその下の歯を治療するためにかぶせ物を外す必要がある場合には、作り直しを検討します [8]。

部分的な処置で必要な状態を回復できる場合には、現在のかぶせ物を補修して使うことも検討します。かぶせ物全体を交換するときには、残っている歯をさらに削る必要が生じる場合があるためです。

ただし、問題を残したまま使用期間を延ばすことを目的にはしません。補修した状態でその歯を維持できるかまで確認したうえで判断します [8]。

色や形が気になり、作り直したいというご希望も、治療を検討する理由になります。かぶせ物が破損していないという理由だけで、やり直す必要がないとは判断しません。何を変えたいのかを伺い、そのために必要な処置と歯への負担を合わせて考えます。

セラミックのかぶせ物をどのくらい使えるか考えるときには、現在残っている歯で修復物を支えられるか、どのような問題に注意する必要があるか、治療後に何を確認していくかを具体的に考える必要があります。これから治療する歯についても、すでにかぶせ物が入っている歯についても、同じ視点から治療とその後の管理を検討します。

長期研究の結果と適用できる範囲

奥歯のかぶせ物を15年間追跡した研究

奥歯に装着した二ケイ酸リチウム製のかぶせ物34本を解析した研究では、15年後の「生存率」は80.1%、「成功率」は64.2%と推定されました。途中で観察が終了した例も含め、それぞれを追跡できた期間を考慮して計算された値です [1]。

この研究でいう生存率は、かぶせ物を使い続けられている割合です。外れたかぶせ物を付け直したり、欠けた部分を補修したりして使用を続けた例も含まれています。

一方、成功率は、むし歯、破折、脱離など、研究で定められた問題が起こらずに経過した割合です [1]。同じ15年間という数字でも、「使い続けられた」ということと、「途中で問題が起こらなかった」ということでは意味が異なります。

この研究で調べられたのは、二ケイ酸リチウムを削り出して作った、奥歯の一本ずつのかぶせ物です。前歯の多色築盛ポーセレンクラウンやブリッジなど、材料や構造、使用条件が異なる修復物に、その数値をそのまま当てはめることはできません。

長期研究の結果は見通しを考える参考になりますが、実際の治療では、診察によって分かる歯の状態と合わせて判断します [1]。

また、15年間追跡した研究があるからといって、15年がかぶせ物の交換時期になるわけではありません。研究での観察が終了したあとも、そのかぶせ物を使い続けられる場合はあります。研究で示された年数と、現在の診察で分かる歯や修復物の状態は分けて考えます。

残っている歯の構造を調べた研究

根管治療を受けた小臼歯を6年間調べた臨床試験では、残っている歯の壁の数と、修復後の経過との関連が報告されています [2]。

この研究は、セラミックなどの修復材料だけでなく、その修復物を支える歯がどの程度残っているかを考える根拠の一つになります。ただし、小臼歯を対象に、特定の条件で修復した歯を調べた研究です。ご自身の歯を何年間使えるかを、そのまま予測できる結果ではありません。

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執筆者

田中良一

表参道歯科アールズクリニック院長

東京医科歯科大学(現 東京科学大学)卒業、山王病院歯科医長(審美歯科・歯周補綴担当)を経て開業。審美修復をはじめ、歯周病やインプラント分野でも国内外で研鑽を積み、知識と技術を培ってきました。歯や歯ぐきの健康、かみ合わせを確かめながら、修復した歯が顔立ちや表情になじみ、ご本人が自分の口元として感じられることを大切にしています。

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