セラミック修復ができるまで

東京の審美歯科、表参道歯科アールズクリニックの多色築盛ポーセレンクラウン

Written by 田中良一 表参道歯科アールズクリニック院長

あなたのお口に入るかぶせ物は、診療室だけで作られるものではありません。診療室とは別の場所で、その製作を担う歯科技工士がいます。直接会う機会がなくても、歯科技工士が作ったかぶせ物は、治療後には患者さんの口元の一部になります。

ここでは、色や性質の異なる陶材を重ねて焼き上げる「多色築盛」という方法で、セラミックのかぶせ物がどのように作られるのかをご紹介します。診療室で採った型が技工所へ届き、一本の歯となって診療室へ戻ってくるまでを順に見ていきます。

歯科医師と歯科技工士の役割

かぶせ物の治療では、歯科医師と歯科技工士がそれぞれの役割を担当します。

歯科医師は、患者さんのお口の状態とご希望を確認して治療を計画し、かぶせ物を支える歯を整えて型を採ります。歯科技工士は、その型や写真、治療に必要な記録を受け取り、技工所でかぶせ物を製作します。完成したかぶせ物は診療室へ戻り、実際のお口の中で適合や色、形を確認します。

歯科技工士の中でも、陶材を使った歯の製作を専門とする人を「セラミスト」と呼びます。ここからは、セラミストが一本の歯を作っていく過程をたどります。

型から石膏模型を作る

歯科医院では、かぶせ物を作る歯の形を記録するために型を採ります。新しいかぶせ物の製作は、その型を技工所で受け取るところから始まります。

型の内側には、患者さんの歯の形が凹みとして記録されています。その中へ石膏を流し込むと、口の中にある歯の形を再現した模型ができます。

型取りに使う材料にも、模型を作る石膏にも、固まる過程で寸法の変化が生じます。そのため、口の中の形をできるだけ正確に技工所へ伝えるには、変形の少ない材料を選び、適切に扱う必要があります。当院で型取りにシリコーンを使用しているのも、そのためです。

上下の模型は、かみ合わせの記録をもとに、咬合器という装置へ取り付けます。咬合器は顎の動きを模擬するための装置で、セラミストは模型上で、上下の歯が接触する位置や顎を動かしたときの歯の関係を検討できます。

一方、石膏模型に記録されるのは、患者さんのお口にある情報の一部です。歯の色や唇の動き、笑ったときの表情までは模型に残りません。模型に記録できない情報は、写真や診療記録として技工所へ伝えます。

天然歯の色と光

セラミストは歯の形を作るだけでなく、天然歯の色や表面の見え方も確認しながら製作します。

天然歯には、内側の象牙質と、その外側を覆うエナメル質があります。象牙質は黄みを帯び、エナメル質を通して見える歯の色に関わります。象牙質とエナメル質はどちらも光を通しますが、光の通り方は異なり、それぞれの厚みによっても見え方が変わります [1]。

歯に当たった光の一部は表面で反射し、一部は歯の内部へ入ります。内部へ入った光は象牙質やエナメル質の中で散乱し、一部が吸収されたあと、再び外へ出てきます。私たちが見ている歯の色や明るさには、こうした内部での光の動きと、表面での反射が重なっています。

同じ歯でも、朝の窓辺と夕方では見え方が変わることがあります。照らしている光の性質が異なるためです。また、話したり笑ったりして歯を見る角度が変われば、光の当たり方や背景も変わります。

そのためセラミストは、一本の歯を一つの色として捉えるだけではありません。どの部分が明るく、どこに濃い色があり、どの部分で光が通って見えるのかを観察し、一本の歯の中にある違いを読み取ります。

陶材を重ねて歯の色と形を作る

セラミストの作業机には、色や光の通し方が異なる陶材の粉が並んでいます。

かぶせ物の内側には、陶材を支える薄い殻があります。この部分をコーピングと呼び、ジルコニアや金属などで作ります。セラミストは模型に合わせて作ったコーピングの上に、陶材を少しずつ重ねていきます。

陶材の粉を専用の液で練り、細い筆ですくって必要な場所へ置いていく作業を「築盛」と呼びます。

まず、象牙質に相当する色を担う陶材を置き、その外側にエナメル質に相当する半透明の陶材を重ねます。さらに、歯の先端に見える青白い色や、内部に見える淡い模様などに合わせて、性質の異なる陶材を加えていきます。

同じ陶材を使っても、置く場所や厚みが変われば、その下にある色の見え方も変わります。セラミストは写真や記録を見返しながら、その歯に必要な陶材の組み合わせと厚みを決めていきます。多色築盛では、このように複数の陶材を重ねながら、歯の内部で見える色と光の通り方を作ります [2]。

焼成による陶材の収縮と修正

陶材を重ね終えた段階では、まだかぶせ物として使える硬さになっていません。湿り気を含んだ陶材を乾燥させ、専用の炉で焼き固めます。この作業を「焼成」と呼びます。

陶材は、焼成すると収縮します。そのためセラミストは、焼き上がったときに必要な大きさになるよう、収縮する量を考えてあらかじめ陶材を盛ります。

焼成後は炉から取り出して冷まし、形や色を確認します。足りない部分には陶材を加えて、もう一度焼成します。最初の築盛だけですべてを完成させるのではなく、焼き上がった状態を見ながら、必要な場所へ陶材を加えて修正します。

一本のかぶせ物を作るために時間がかかるのは、形を整えるだけでなく、色や光の見え方も確認しながら製作するためです。築盛、焼成、確認、修正を重ねることで、陶材の粉だったものが、歯として必要な形と表面の状態に近づいていきます [2]。

機械加工と多色築盛の違い

セラミックのかぶせ物には、塊状の材料から機械で削り出して製作する方法もあります。

口の中や模型の形を読み取り、コンピューター上でかぶせ物の形を設計し、機械で加工する方法がCAD/CAMです。内側のコーピングを機械で製作し、その上にセラミストが陶材を築盛する場合もあります。機械加工と手作業は、一つのかぶせ物の製作の中で組み合わせることができます [3]。

色や透過性があらかじめ設定された材料から削り出す場合には、その材料が持つ内部構造を利用します。色や透過性が段階的に変化する材料では、材料のどの位置から歯を削り出すかも、完成後の見え方に関わります。

多色築盛では、セラミストが陶材を置く位置や厚み、組み合わせを、その歯に合わせて変えます。明るさを保ちたい部分、色を濃く見せたい部分、歯の先端で光を通したい部分などを確認しながら、陶材を重ねていきます。

ただし、周囲の天然歯になじんで見えるかどうかは、製作方法の名前だけで決まりません。どのような歯を作る必要があるのかを確認し、それに合った材料と製作方法を選び、最後は実際の口元で確かめる必要があります。

歯科医師からセラミストへ伝える情報

技工所へ届く石膏模型には、歯の形は記録されていますが、歯の色や患者さんの表情までは記録されていません。

たとえば、色見本の番号である「A2」だけを伝えても、歯のどの部分が明るく、どこで光が通って見え、どの部分に模様があるのかまでは分かりません。条件をそろえて撮影した写真や、部位ごとの特徴を記録した資料があれば、セラミストは製作する歯の特徴をより具体的に検討できます。

顔立ちの中で歯がどう見えるのか、患者さんがどのような口元を希望しているのかという情報も、模型だけから読み取ることはできません。歯科医師が診療室で得た情報を技工所へ伝え、製作上の疑問があれば、歯科医師とセラミストが内容を確認し合います。

歯科医師とセラミストは、異なる場所でそれぞれの仕事を担当しながら、同じ一本の歯について検討します。製作に必要な情報が足りなければ、セラミストに技術があっても、何を目標に歯を作るのかを十分に判断できません。そのため、診療室で得た情報を適切に伝えることも、かぶせ物を製作するうえで必要です。

当院では、この多色築盛ポーセレンクラウンの製作を、oral designメンバーの内海賢二氏に依頼しています。

完成したかぶせ物を口の中で確認する

焼成と修正を終えたかぶせ物には、最後に表面を仕上げる作業を行います。細かな凹凸を整え、周囲の天然歯に合わせて艶を調整します。陶材の内部の重なりだけでなく、表面で光がどのように反射するかも、歯の見え方に関わるためです [2]。

こうして仕上がったかぶせ物が、技工所から診療室へ戻ってきます。

模型上で確認していたかぶせ物を、今度は患者さんのお口の中で確認します。支えとなる歯への適合、隣の歯との接触、かみ合わせを調べ、実際の口元で色と形を確かめます。修正が必要であれば、診療室で確認した内容をセラミストへ伝えます。

患者さんにも鏡で見ていただき、ご希望に沿った色や形になっているかを確かめます。模型や写真、診療室からの記録をもとに製作してきた一本を、最後は患者さんご本人の口元で確認します。

患者さんの口に入る一本のかぶせ物は、診療室での診査や治療と、技工所での製作を経て完成します。次にご自身の口元を見るとき、かぶせ物の製作には、直接会うことの少ない歯科技工士の仕事も関わっていることを知っていただければと思います。

関連ページ

参考文献・資料

  1. Yu B, Ahn JS, Lee YK. Measurement of translucency of tooth enamel and dentin. Acta Odontologica Scandinavica. 2009;67:57-64.doi:10.1080/00016350802577818. 象牙質とエナメル質の透過性、および厚みによる違いについて。
  2. Creation Willi Geller. Creation ZI-CT: Instructions for Use. pp.42–64.フレーム、築盛、焼成収縮と修正、表面性状と艶の調整について。製作工程を確認するための技術資料。
  3. Mohaghegh M, Pourzarabi D, Taghva M, Derafshi R. Fracture Resistance and Surface Roughness of Zirconia Crowns Veneered by Layering, Press-on, and CAD-on Methods. Journal of Dentistry, Shiraz University of Medical Sciences. 2026;27(3):210–217. doi:10.30476/dentjods.2025.105198.2579. 機械加工したコーピングと手作業による築盛を併用する製作工程について。

執筆者

田中良一

表参道歯科アールズクリニック院長

東京医科歯科大学(現 東京科学大学)卒業、山王病院歯科医長(審美歯科・歯周補綴担当)を経て開業。審美修復をはじめ、歯周病やインプラント分野でも国内外で研鑽を積み、知識と技術を培ってきました。歯や歯ぐきの健康、かみ合わせを確かめながら、修復した歯が顔立ちや表情になじみ、ご本人が自分の口元として感じられることを大切にしています。

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