以前に治療したセラミックや差し歯について、次のようなご相談が多くあります。

「もう少し白くしたい」

「隣の歯になじむ色にしたい」

「歯の形や長さを変えたい」

「笑ったときに、口元だけが浮いて見える」

「歯ぐきとの境目や黒い線が気になる」


「歯と歯の間にできた黒い隙間を目立たなくしたい」

「治療後から噛みにくさや話しにくさがある」

といったご相談をお受けしています。

やり直しの診療では、まず、現在の歯のどこが気になり、どのように変えたいのかを具体的にうかがいます。

より明るい歯にしたいのか、周囲の天然歯になじませたいのか、口元全体の印象を変えたいのか。同じ「白くしたい」という言葉でも、目指している結果は一人ひとり異なります。そのご希望を確認したうえで、現在の違和感がどこから生じているのかを診断します。

やり直しの前に診断すること

セラミックや差し歯の違和感は、修復物の色や形だけに原因があるとは限りません。診査では、主に次の点を確認します。

  • 現在の修復物の色、形、表面、境目の状態
  • 隣り合う歯や、反対側の歯との関係
  • 笑ったときの歯の見え方と、唇や顔立ちとの関係
  • 歯ぐきの炎症、退縮、左右の高さ
  • 修復物を支えている歯と土台の状態
  • 神経や歯根、その周囲の骨の状態
  • 噛んだときと、顎を動かしたときの接触
  • 歯と歯が接触する位置、歯根の向き、歯間部の歯ぐきと骨の状態
  • 発音に関係する前歯の長さと裏側の形

歯ぐきや歯根、土台、かみ合わせに問題がある場合は、修復物の補修や交換だけでは解決できないことがあります。原因に対して必要な処置も含め、ご希望の変化を目指すうえで必要な処置と、その順序を整理して治療計画を立てます。

ご希望に応じて検討する内容

色や白さを変えたい場合

希望する明るさと色調を確認し、隣の天然歯、下の歯、肌や唇の色との関係を見ます。

周囲の天然歯も明るくしたい場合には、先にホワイトニングを行い、その後の色に合わせて新しい修復物を製作することがあります。人工の歯はホワイトニングでは白くならないため、処置の順序が重要になります。

一本だけをやり直す場合は、隣の天然歯との色、光の通り方、表面の質感を合わせる必要があります。複数本をやり直す場合には、一本ずつの色だけでなく、歯列全体としてどの程度の明るさを目指すかを検討します。

歯の形や長さを変えたい場合

歯の形は、正面から見た輪郭だけで決めるものではありません。

口を閉じているときに見える歯の量、笑ったときの唇との関係、発音、かみ合わせまで確認します。必要に応じて、模型上で目標とする形を作り、仮歯で実際の見え方と発音などを確かめます。

ご希望の形をそのまま作ると、歯ぐきやかみ合わせに無理が生じる場合もあります。その場合は、実現できる範囲と変更が必要な点をご説明し、形を一緒に検討します。

歯ぐきとの境目が気になる場合

黒い線、歯ぐきの退縮、歯と歯の間の黒い隙間、左右で異なる歯ぐきの高さには、それぞれ異なる原因があります。

修復物の境目や土台が影響していることもあれば、歯ぐきやその下の骨の状態が関係していることもあります。新しいセラミックへ交換するだけで改善できるか、歯ぐきに対する処置が必要かを診断します。

歯ぐきの位置や骨の状態によっては、完全には揃えられない場合もあります。治療を始める前に、改善できる範囲をお伝えします。

歯と歯の間の黒い隙間が気になる場合

歯と歯の間に生じる三角形の黒い隙間は、ブラックトライアングルと呼ばれます。

原因には、修復物の形や歯どうしが接触する位置、歯根の向き、歯ぐきの退縮、歯を支える骨の高さなどが関係します。同じように見える隙間でも、原因によって対応できる方法は異なります。

修復物の形が原因であれば、新しいセラミックの形を調整することで、隙間を目立ちにくくできる場合があります。ただし、隙間を埋めるために歯を必要以上に幅広くすると、不自然な形になったり、清掃しにくくなったりします。

歯ぐきや骨の退縮、歯根の向きが主な原因である場合には、セラミックを交換するだけでは十分に改善できないことがあります。歯周治療や歯の位置を動かす治療の必要性も含めて検討し、修復治療で対応できる範囲と限界をご説明します。

噛みにくさや話しにくさがある場合

前歯は見た目だけでなく、食べ物を噛み切ること、顎を動かすこと、発音することにも関係しています。

修復物の長さや裏側の形、上下の歯の接触を調べ、違和感が修復物によるものか、歯列や顎の動きまで含む問題なのかを確認します。

一本の修復物を作り直すだけでは解決できない場合には、必要となる治療範囲を先にご説明します。

古い修復物を外してから分かること

診察やエックス線検査によって、修復物を外す前に多くのことを確認できます。しかし、被せ物の下にある歯、土台、ひび、むし歯の範囲などは、外して初めて正確に分かることがあります。

そのため、外す前に立てた計画が、修復物を外した後の状態によって変更になる場合があります。

治療を進める際には、あらかじめ考えられる状態と治療方法をご説明します。修復物を外した後は、歯の状態を確認して必要な処置を行い、仮歯へ置き換えます。計画の変更が必要になった場合は、その理由と治療内容、期間や費用への影響をご説明し、ご相談のうえで進めます。

仮歯で形と機能を確認します

やり直しの治療における仮歯は、最終的な歯ができるまでの代用品だけではありません。

歯の長さ、幅、傾き、唇の支え方、発音、かみ合わせを、実際の口の中で確認するためのものです。仮歯を入れた状態で、話したとき、笑ったとき、噛んだときの感覚を確かめていただきます。変更したい点があれば調整し、見た目と機能の両方が成立する形を探します。

必要な症例では、仮歯を作り直しながら最終的な形へ近づけます。確認した形を記録し、その情報を最終修復物の製作へ引き継ぎます。

最終的なセラミックの製作

当院では、前歯のセラミック修復に、多色築盛によるポーセレンクラウンを用いています。

色を明るくしたい場合も、隣の天然歯になじませたい場合も、診療の中で検討した明るさや色調、光の透け方を、最終的なセラミックに反映します。天然歯は部位によって色や光の通り方が異なるため、性質の異なる陶材を重ね、目標とする見え方に合わせて各層の色や厚みを調整します。

製作は、oral designのメンバーであるセラミスト(歯科技工士)が担当します。口腔内写真、顔貌写真、診断資料、仮歯で確認した形を共有し、必要に応じてセラミストが直接色を確認します。

どの形と色を目指すのか、その形が歯ぐきやかみ合わせの中で成立するかを診療で確かめ、製作に反映することが必要です。材料と製作技術は、この目標を実現するために用います。ただし、材料や製作方法だけで、希望する結果が決まるわけではありません。どの形と色を目指すのか、その形が歯ぐきやかみ合わせの中で成立するかを、治療前から検討することが必要です。

再治療を繰り返さないために

今回の問題がどこから生じたのかを確認し、歯や歯ぐきに必要な処置を行ってから、新しい修復物を作ります。治療後も、修復物の境目、歯ぐき、かみ合わせなどの状態を確認します。

変化が見られた場合は、その原因と範囲を調べ、その時々に必要な管理や補修を検討します。治療した歯をできるだけ長く維持するために、日々の清掃と定期的な確認を続けていきます。

参考資料

FDI「Repair of Restorations」
https://www.fdiworlddental.org/repair-restorations

主なリスクと治療の限界

修復物を交換する際には、残っている歯をさらに削ることがあります。神経が残っている歯では、歯の内部にある歯髄(神経を含む組織)の健康に影響が及ぶこともあります [1]。

治療後にセラミックが欠けたり、割れたり、修復物が外れたりすることがあります。状態によっては、補修や再製作が必要になります [2]。

また、歯ぐきや骨、歯根の位置、残っている歯の状態によって、希望する色や形、隙間の改善に限界が生じる場合があります。診断で予測できることと、古い修復物を外してから判断することを分け、治療前にご説明します。